2022.03.25 【関西エレクトロニクス産業特集】DXの推進と情報通信基盤強化に全力近畿総合通信局 淵江淳局長に聞く
関西発ローカル5G支援
セキュリティー対策も課題
-ローカル5Gでは〝関西発〟を意識した取り組みが進んでいるようです。
淵江局長 地域の企業や地方公共団体などのさまざまな主体が、自らの建物内や敷地内で独自の5Gシステムを構築できる「ローカル5G」の開発実証を行っている。2020年に発足した「近畿ローカル5G推進フォーラム」を核に、関西発のローカル5Gの利活用を進める取り組みを支援していく。
5Gの推進には高品質で安価な5G機器や測定器が必要で、今月開催した第6回会合では、導入・運用費用の低廉化が不可避との考えから、コスト面に焦点を当てた事例紹介をしており、関係業界と連携も強化している。
また、近畿農政局とはスマート農業の支援、近畿運輸局とはICTによる観光支援と、5Gを含むICTを活用して連携している。今後も多くの関係機関と協力し、関西発のローカル5Gの利活用を進めていきたい。
-大阪・関西万博が3年後に迫りました。
業界発展に協力
淵江局長 未来社会の実験場である大阪・関西万博では、5Gの実装、Beyond 5G readyショーケースの実現が予定されている。2025年日本国際博覧会協会などと連携し、これらの取り組みを支援することで、万博を契機に関西の業界発展に協力していく。
総務省では、グローバルで自由な交流を促進するため、AI(人工知能)により会話の文脈や話者の意図を補完した実用レベルの「同時通訳」の実現を目標に研究開発を行っている。
大阪・関西万博において、リアルとバーチャル開催に参加する世界中の人々に「言葉の壁」のない環境で楽しんでいただけるよう、関係機関と連携し、多言語翻訳システムの社会実装を目指す。
重要無線通信妨害についても会場周辺に電波監視施設(小型モニタリングセンサー装置)を設置して迅速に排除する考えだ。
-関心が高まっているサイバーセキュリティー対策についてはいかがですか。
淵江局長 高度の情報通信基盤を整備する上で、ICTを活用した事業展開、テレワークなどに乗じたサイバー攻撃、フィッシングメール、ランサムウエアなどの増加、また悪質化、巧妙化などに対応して、社会全体でサイバーセキュリティー対策を講じることが喫緊の課題。
近畿総通局では、近畿経済産業局、関西情報センターと共同事務局となっている「関西サイバーセキュリティ・ネットワーク」を中心に、中小企業の経営者、セキュリティー責任者をはじめ、一般向けの講座や将来のセキュリティーエンジニア養成の土台となる若年層向けワークショップの開催などにより、社会全体でサイバーセキュリティーに取り組むことが必要だ。
また、情報通信研究機構(NICT)を通じて実施する体験型の実践的サイバー防御演習(CYDER ※1)の地方公共団体、企業などによる受講促進や、脆弱(ぜいじゃく)なIoT機器対策(NOTICE ※2)による利用者への注意喚起などで、サイバーセキュリティー対策を一層強化していく。
-放送のインフラ整備も万全ですか。
強靱なインフラへ
淵江局長 情報化社会では高度な情報通信基盤を支える高速広帯域、耐災害性などの高度で強靱(きょうじん)なインフラが必要だ。Society5.0を支える重要インフラの光ファイバー網の整備では、近畿管内は、2030年までに世帯カバー率99.9%という政府の目標を既に超えたが、引き続き地方公共団体の要望を踏まえながら、全ての国民が地理的制約にかかわらず享受できる環境を実現したい。
放送においては、21年度に、京都放送の予備電源設備の整備およびテレビ和歌山の予備中継回線設備の整備、奈良県大淀町および天川村でケーブルテレビネットワークの光化を支援した。
生活密着情報や災害時情報を提供する重要なインフラの放送サービスを確保するため、地上基幹放送やケーブルテレビネットワークの強靱化・耐災害性強化、ラジオの難聴解消を行う地方公共団体、放送事業者などを引き続き支援していく。
いずれにせよ強調したいのは、5G、ローカル5G、IoT、AIなどのICTの利活用により、関西のデジタル変革(DX)を推進して関西の産業界を支援していきたいということだ。
※1 CYDER:Cyber Defense Exercise with Recurrence
※2 NOTICE:National Operation Towards IoT Clean Environment