2022.03.29 京大とパナソニックマイクロ波電力伝送システムを開発
パナソニックが開発したマイクロ波電力伝送システムEnesphere(エネスフィア)
パナソニックは、マイクロ波電力伝送システムの試験用サンプルの提供を開始する。同社と京都大学生存圏研究所の篠原真毅教授は、京都大学COI(Center of Innovation)において共同で研究開発を進めてきたが、このほどプロトタイプシステムの開発を完了、様々な用途・シーンでの試験的活用を進めていく。
開発したシステムは、920メガヘルツ帯のマイクロ波(電波)を活用し、長距離(~10メートル)でのワイヤレス電力伝送を行うことが可能で、電池交換や電源ケーブルが不要でいつでもどこでも電源供給をできる技術。
この920メガヘルツ帯のマイクロ波電力伝送技術は、2022年に電波法施行規則等に関する省令が改正される見込みで、免許を取得することで屋内の一般環境下で利用できる。
現段階では送電できる電力が1ワット以下と小さいため、受電機器はセンサーをはじめとする小電力で動作する機器に限定されるが、離れた場所に設置された送電機から常に電力を供給できるだめ、電池切れの心配や電源コードの煩わしさの無い空間を実現できる。
今回、パナソニックは、京都大学と開発した技術を組み込み、920メガヘルツ帯の電波を活用した送電機と受電機からなるマイクロ波電力伝送システムEnesphere(エネスフィア)を開発した。このシステムは、1ワット出力の送電機と、カードタイプ、人体装着タイプ、液晶表示タイプ、基板タイプなどの様々な形態の受電機から構成され、準備が整い次第、サンプル提供を開始する予定で、様々な用途・シーンでの試験的活用を進めていく。
京都大学とパナソニックは、高効率に電力を送電、受電する小型アンテナ技術、受電したマイクロ波電力を高効率に安定して直流へ変換する回路技術の開発に取り組み、1ワット以下の出力電力でも、数㍍先のセンサなどの機器を動作させることができるようにした。
また、一般的なアンテナは、人に近づけた場合、人体に電磁波が吸収されてしまうため受電効率は下がるが、開発した受電機のアンテナは、人が身に着けた状態でも高効率に動作する。
これにより、見守り・健康管理用のバイタルセンサへの適用が期待されるほか、送電機は広い範囲へ電波を放射するため、ひとつの送電機から複数の受電機へ一括で送電でき、工場・オフィスなどに多数設置されるIoTセンサーへの電源供給手段として活用できる。
IoTの普及でセンサーなどの受信機器が増加することで、定期的な電池交換、充電作業、電源ケーブルによる配信施工など、負担もかかるようになる。このため電源を無線化する技術へのニーズが高まっている。
また少子高齢化により、見守り・健康管理用のバイタルセンサの需要も増えるが、これは長時間にわたり人の情報をセンシングするため、電池交換や充電作業も困難だ。新技術はこうした困難を解決する技術として注目される。