2022.06.23 【カーエンターテインメント特集】カーAVC市場、回復基調にドライブレコーダーが拡大

 市販カーAVCはカーナビゲーションシステムをはじめ、カーAVユニット、カーCDプレーヤー、カースピーカーなどがある。アンプやDSP(デジタルシグナルプロセッサー)など、高音質化に欠かせない機器なども発売されている。かつては新型車を購入するとカーオーディオやカーナビを市販品に交換する需要が多く、市販カーAV市場は活況だった。

 ここ20年はナビとAV機器が一体となったAVナビが主流になり、AVナビの開発競争が加速。各社は純正にはない市販製品ならではの高機能な道案内、見やすい地図表示、高音質なオーディオを前面に純正オーディオからの交換を進めてきていた。特に純正ナビは性能が高くなく高額だったことから市販AVナビを求める声も多かった。

 さらに最近10年の動きをみると、ナビ画面の大画面化が始まり、各社は大画面ナビの開発を本格化した。それまで自動車のダッシュボードにオーディオを装着するスペースはDINと呼ぶ規格で決められており、ダッシュボードに埋め込むナビは2DINスペースで最大7インチのモニターしか入らなかった。トヨタやダイハツの一部で横幅が200ミリメートルの装着スペースを設けた車種があり、200ミリメートル対応ナビを発売する動きはあったが、大画面ナビという動きではなかった。

 この2DINスペースに8インチ以上のナビを装着したのがアルパインだ。ダッシュボードのナビ取り付け位置周辺のパネルを専用に開発することで大画面を装着できるようにした。車種専用設計にはなるが、人気車種を中心に製品群をそろえたことで大画面ナビの市場が形成された。

 その後、主要市販ナビ各社が車種専用の大画面ナビを発売し大画面化の流れができたが、車種専用で周辺パネルまでセットで開発するには開発コストなどがかさむため、全てのメーカーが車種専用ナビを発売することはできなかった。現在も大々的に車種専用ナビを展開するのはアルパインだけになっている。

 ただ、大画面ナビの潜在需要の大きさから自動車メーカー各社も大画面ナビの装着を本格化し、現在では8インチ、9インチのナビが装着できる車種が拡大。7インチナビと同様に汎用(はんよう)で8インチや9インチが装着できるようになり、汎用の大画面ナビを設定するメーカーは多い。

 大画面ナビでは、パナソニックがダッシュボードからモニターが浮き出るフローティングと呼ぶ構造を採用したナビを発売したことで市販市場に新たな風が吹き込まれた。車種専用だった大画面ナビをどのクルマにも装着できるようにしたことで、これまで大画面ナビの装着を諦めていた層も注目。現在ではアルパインやJVCケンウッドも製品群をそろえる。

 半面で自動車メーカー側もナビの装着率を高める施策を打ち、純正やディーラーオプションでのナビ装着を強化。純正ナビの装着も高まっていることから市販カーAVメーカーは市販にしかない機能を訴求した取り組みを進める。

 一時期は市販ナビでも安心安全機能を強化する動きがあったが、新型車の運転支援機能と同じことはできないため、最近は新型車だけでなく既販車にも魅力ある機能を強化している。特にエンターテインメント機能を強化する動きが目立ち、移動中に高音質な音楽を楽しんだり後部座席で映像コンテンツを楽しんだりできる機能強化と提案が進む。スマートフォンなどと接続するディスプレーオーディオも拡大しており、今後は幅広い層に向けたカーAV機器の提案が不可欠になりそう。

 安心安全の視点では、ドライブレコーダーも市場が拡大している。事故などの記録やあおり運転の記録に役立つことからユーザーの関心は高く、底堅く推移している。高画質化が進むとともに前方だけでなく後方も確認できる2カメラタイプが人気だ。

 市販市場は新型車の販売などにも大きく左右されるため、ここ1~2年は厳しい状況が続く。電子情報技術産業協会(JEITA)の2021年のカーAVC機器出荷は前年比1.2%減の6037億円だった。ただこの先は、少しずつ需要が回復基調になるとみられる。