2022.07.01 【家電総合特集】おうち時間〝快適な住空間〟実現へ、エンターテインメント性も

「寝ながらの視聴」を提案する小型プロジェクター「NX1」(ネクストレージ)

 新型コロナ禍は、人々が求める家電需要に変化をもたらした。その一つが、自宅で過ごす時間を快適にしたり、充実させたりするための家電だ。

 「快適な住空間」を実現するための家電としては、さまざまな製品が当てはまる。おいしく健康的な食生活を送るための調理家電、衛生・清潔な空間を作るための空気清浄機や除菌器、掃除機などが代表的なものとして挙げられる。

 そうした中、エンターテインメント性を持った家電でも、これまでとは異なるニーズで需要の底上げが進んでいる。

 急速に存在感を高めているのが、天井に設置するシーリングライトに、プロジェクターとスピーカーの機能を搭載した家庭用の〝3in1〟プロジェクターだ。2018年にpopIn(ポップイン、東京都港区)が世界で初めて発売し、今年4月までに累計20万台以上を販売した製品で、アンカー・ジャパンも今年4月にこの市場に参入した。

 ポップインが開発した〝3in1〟プロジェクター「ポップイン アラジン」は、スマートフォンを使わずに子どもとコンテンツを共有し、一緒に遊ぶにはどうしたらよいかを程涛(テイ・トウ)社長が考えたことが原点。住空間という限られたスペースの中、大画面でコンテンツを楽しく共有するには、テレビよりもプロジェクターが最適と判断し、クラウドファンディングを使って製品化した。

 そのため、独自コンテンツの開発にこだわり、例えば「美風景」では世界中の美しい風景や星空などを投影できる。部屋の壁に映す大きな「壁紙」のような使い方も提案している。6月に発売した新製品では「おうちカラオケ」の提案も始めた。映像投影にとどまらない提案で、おうち時間の充実につなげようとしている。

 こうした需要が盛り上がりを見せる背景には、アウトドア人気でモバイルプロジェクターが脚光を浴びていることも関係している。キャンプなどのアウトドアシーンで映画などを楽しめるものとして需要が伸びており、プロジェクターという製品そのものを見直す契機になってもいる。

 SDカードなどを開発・販売するNextorage(ネクストレージ、川崎市川崎区)が今年3月に発売した小型プロジェクター「NX1」も、コロナ禍によるライフスタイルの変化を受け、注目を集めている製品の一つだ。同社がNX1で提案するのは「寝ながらの視聴」。手のひらサイズの小型プロジェクターを専用のフレキシブルアームでベッドに取り付け、天井や壁などに映像を投影して寝ながら楽しむことを想定する。モバイルプロジェクターをソニーで開発してきたメンバーが集結して製品化しており、本体デザインや映像の作り込み、「寝室使い」にターゲットを絞った使い勝手などにこだわっている。

 開発メンバーの一人である、商品開発1部1課の石井幸央統括課長は「コロナ禍でインドアニーズが増えた。家で五感を刺激するような製品を開発したかった」とし、コロナ禍で変化した需要が追い風になっていると力を込める。

照明でくつろぎを

青空照明「EWINDOW」

 屋内外を照らす照明にも、付加価値を求める傾向が強まっている。家電や家具など住空間に彩りを与える製品の中でも後回しにされがちなのが照明だが、ここにきて明かりの質を重視する機運が高まっている。

 三菱電機照明がオフィスや施設向けとして20年10月に発売した青空照明「misola(みそら)」。窓のない地下室などの空間でも、青空の下にいるかのような明かりを実現するLED照明だが、一般住宅にも採用が進んでいる。導入先を対象としたアンケート調査からは、リラックス効果や開放感につながる傾向が浮き彫りになっており、付加価値の高い照明として住宅用としても注目を集めている形だ。在宅時間が長くなり、よりリラックスできる住環境を整えたいという需要の盛り上がりを反映していると言えよう。

 今年4月には、二子玉川 蔦屋家電(東京都世田谷区)にリフォームショールームがオープンした。家電などの体験型ショールーム「蔦屋家電+」のコンセプトをリフォームに応用したもので、上質で快適な住空間を実現する住設機器を提案している。開設時には、「EWINDOW(イーウィンドウ)」という青空照明も展示された。

 コロナ前であれば、こうした照明の価値は伝わりにくかった。それがコロナによって急変。外出自粛を受けて旅行などに使っていたお金が、リフォームをはじめとする住環境の整備に充てられるようになった。それが照明の価値を再定義する契機にもなっている。

 コロナが落ち着きを見せているため、今後はまた違った状況になりそうだが、テレワークの浸透といった世界的な潮流は変わらない。自宅で過ごす時間はアフターコロナでもコロナ前より長くなりそうで、おうち時間を充実させたいという需要と、それを捉えるための新商材の開発は、引き続き活発な状況が続くはずだ。