2022.08.25 【化学材料特集】 化学材料メーカー各社、国内外で生産能力増強新工場建設や新棟増設を計画
東京応化工業熊本新工場の建設予定地(熊本県菊池市)
研究開発センター 国内への再投資活発
化学材料メーカー各社は、グローバルでの旺盛な需要に対応するため、国内外でエレクトロニクス素材の生産能力増強に向けた設備投資を活発化させている。次世代自動車、5G/ミリ波関連、次世代半導体プロセスなどでの需要増を踏まえ、各社とも新工場建設や既存工場の拡張、新ライン増設などを推し進める。
エレクトロニクス材料の世界需要は、新型コロナ禍からの経済回復を追い風に、2021年は順調に需要が拡大し、22年の年明け以降も高水準が続いた。
22年の年央以降は、ウクライナ侵攻などの余波で、欧州でのコンシューマー製品の消費が低迷。また、22年度下期に向けて、一部の半導体デバイスメーカーなどでは設備投資先送りなどの動きもみられるが、電子材料のグローバル市場の中長期の拡大期待に変化はない。
今年後半から23年にかけて、多くの電子部品メーカーが国内外で新工場建設や新工場棟の増設を計画している。
東京応化工業は、熊本新工場(熊本県菊池市)建設に今年中に着工する予定だ。熊本新工場は高純度化学薬品の最新鋭工場として整備する。半導体用フォトレジストの主力工場の郡山工場(福島県郡山市)では新検査棟を完成させ、7月から運用を開始した。
郡山工場新検査棟「K-3棟」は地上3階建てで、総延べ床面積は8815.33平方メートル。新たな検査装置を導入し、製品の品質や検査効率の向上を見込んでいる。加えて、将来の需要増加にも対応できる拡張性を備えた。このほかにも各工場で生産増強を進める。
クラレは、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」の生産体制増強のために建設を進めてきたタイ新工場の建設がほぼ完了し、22年第4四半期(10~12月)以降の商業運転開始を予定している。
タイプラントの商業運転開始後の年間生産能力は1万3000トンを計画。これにより、国内と合わせたジェネスタ年産能力は2万6000トンに増強される見通しだ。
デクセリアルズは、協業先の自動車デザインハウス、独セムソテック社と共同で、ドイツ・カームに最先端の車載ディスプレーのための光学ソリューションセンターを立ち上げる。稼働時期は23年前半を予定。同センターには大型・曲面・異型のディスプレーに対応する最新の塗布・貼合装置を導入する。
同社ではほかにも、中期経営計画に基づき、反射防止フィルムや表面実装型ヒューズの増産投資を急ピッチで進めている。
中興化成工業は、半導体、医療関連や自動車関連向けフッ素樹脂製品の製造増産に備えるため、宇都宮工場(栃木県鹿沼市)の新棟「WEST WING」を建設し、今春から稼働している。
大陽日酸は、尼崎事業所(兵庫県尼崎市)内に高圧ガス容器再検査用の総合耐圧検査場の建屋・設備を建設し、7月から稼働させた。建築規模は1500平方メートル弱。スケールメリットを生かした生産性の向上や、グループ内での着実な技術継承につなげる。
各社の設備投資意欲は今年度下期にかけても積極さが継続している。反面、昨今のインフレ加速に伴う資材価格高騰などが、設備投資金額を想定以上に上昇させるという傾向もみられる。
最近は国内研究開発センターへの再投資も活発になっている。研究開発施設内に、顧客やアカデミア、スタートアップなど社外パートナーとの協創空間を設ける取り組みも進んでいる。