2022.10.19 ローデ・シュワルツがオシロスコープ拡充、内製ASICで高速処理・中型機「MXO4」で浸透図る
ローデ・シュワルツの新型オシロ「MXO4」
ローデ・シュワルツは、オシロスコープのラインアップを強化している。今年に入りハイエンドクラスを次々に投入。先月には「新世代オシロ」と銘打つミッドレンジタイプ「MXO4」を発売し、市場への浸透を図る。
同社は6月に最大周波数6ギガヘルツの「RTO6」、同16ギガヘルツの「RTP-B」の高級機種を相次ぎリリース。同300メガヘルツの「RTB2000」や、ハンドヘルドの「RTH1000」などの標準機と、これらハイエンド機の橋渡しをする位置付けとなるのが「MXO4」だ。
最大の特長はASIC(特定用途向け半導体)を自社開発した点。ASICの内製は、上位モデルのRTO6やRTPシリーズでも行ったが、中型機では初めて。MXO4専用のASIC「MXO-EP」を新たに開発・搭載し、業界初となるさまざまな高機能を実現した。
まず、1秒間に450万回の波形の更新速度。RTO6の100万波形、RTPの75万波形をはるかにしのぐ業界最速だ。散発的な信号異常を確実に検出することができる。
デジタル・オシロスコープには特有のデッドタイムが生じるため、その間は波形を観測できない。マーケティング部統括部長の関野敏正氏は「1秒間に450万波形の更新速度だとほぼデッドタイムがない」とし、発生頻度の非常に低い不具合波形や異常信号の捕捉が可能になるという。信号処理の最適化はASICにより実現した。
MXO4シリーズは12ビットのADコンバーター(ADC)を搭載。分解能は従来の8ビットオシロの16倍で高精度な測定が可能になる。標準機能の高分解モードにすれば最高分解能は18ビットまで向上。しかも18ビットのADCで捉えたデータに対して演算や、FFTなどの処理をする際も全て18ビットのデータを利用して行える。
12ビットに比べデータ量が増えるため、通常は波形更新速度が低下するなどの制限が生じるが、関野氏は「ASICの実装で18ビットの高分解能モードでのデータ処理もスムーズに行える」と説明。1チャンネル当たり400メガポイントの大容量メモリーを搭載したことで処理能力が向上し、長時間の捕捉が可能になったのも大きい。
MXO4にはミッドレンジとして初めてデジタルトリガーも搭載した。アナログに比べ微小な信号も確実に捉えることができる。
1秒間に最高4万5000回の高速FFT処理が行え、EMI(電磁妨害)でデバッグ作業をする際に威力を発揮する。関野氏は「用途では組み込み機器のデバッグが一番多い」とし、開発初期にEMIの評価を実施しておけば、手戻りリスクを減らせると指摘する。
中小規模事業者の回路設計技術者など、これまで接点が少なかったユーザーからの問い合わせも多いという。
上位機種を上回るスペックながら、価格は中型機並みに抑えたMXO4。関野氏は「周波数帯域500メガから1ギガヘルツまでのボリュームゾーンで市場を席巻したい」と意気込む。