2022.11.16 【高専制度創設60周年特集】電波新聞社の高専就職支援事業の取り組みを聞く 企業と学生の課題解決へ
合同企業説明会の様子
電波新聞社は2022年から高等専門学校生の就職支援を専門に行う事業を立ち上げた。一人でも多くの高専生に日本のモノづくり業界で活躍してもらうことを目指し、長年メディア事業で培ってきたエレクトロニクス業界内でのつながりと、最先端の技術に対する読解力や発信力を生かしていく考えだ。今春、就職支援事業部を立ち上げ、高専生に向けた情報発信と就職支援を始めた平山勉社長に施策を聞いた。
-事業を立ち上げた背景は。
平山 近年、高等専門学校に対する注目度は増し産業界からの高専生に対する期待が高まりつつある。半面で高専生の就職活動やキャリア形成には課題が多く残されていると考えている。例えば日本の企業数の99.7%を占めている中小企業の中には技術力を持っていても知名度が低いために就職者希望者は多くはないところがある。一方の高専生は、就職以外にも起業、専攻科進学・大学編入など、さまざまな選択肢があるものの、逆に選択肢が多い分、進路について悩んでいる学生も多いと聞いている。企業側と学生側の双方が抱えている課題を解決したいと思い事業を立ち上げた。
-電波新聞社が高専生の就職支援を行う理由は。
平山 電波新聞社は1950年の創刊以来、メディアの立場から70年以上にわたってエレクトロニクス業界の発展を支援してきた。ここで培ってきた経験、業界内外の企業とのつながり、最先端の技術の読解力・発信力が強みになる。その間、月刊「マイコンベーシックマガジン」をはじめ、プログラミングや教科書といった教育関係書籍を発行するなど、教育機関との連携や教育分野での知見も積んできた。
日々の取材の中で、特にこの数年は企業の皆さまから高専生への期待の声が高い半面、高専生のキャリアに対する悩みが多いことを聞く機会が増えているため20年から支援事業の検討を始めた。当社は創刊70周年を迎えた2020年に「ユニークな発想でモノづくり社会を支え、皆さまと共に世界を豊かにする」というビジョンを策定しており、ビジョン実現の一つとして取り組んでいる。
-就職支援事業部の主な事業と実績は。
平山 高専生と企業とのマッチングをすることが目的で、現在はオンラインによる企業の説明会や、各高専での対面式の企業説明会を行っている。既に多くのオンライン企業説明会の要請を受け実施しているほか、産業技術高等専門学校(産技高専)品川キャンパスでは先般、ものづくり工学科電気電子工学コースの4年生向けに合同企業説明会を実施した。
当社説明会の参加企業はBtoB企業で中小企業に絞っている。アンケート結果では、8割の学生が参加企業を知らなかったが、9割の学生がいずれかの参加企業に興味を持ち、全体の満足度も9割を超えていた。当社とつながりのある「技術力を持った中小企業」を高専生に紹介できたからこそだと考えている。就職活動期間の短い高専生の皆さんには、ぜひ大手だけでなく技術力を持った中小企業にも目を向けてもらいたい。
-今後の展開は。
平山 合同説明会やメディアを通じて技術力を持った中小企業の紹介を高専生に続けていくほか、新聞社という中立性・公平性を持った報道機関の立場を生かし、高専生に寄り添ったキャリア相談などを展開していきたい。新聞記者は企業を分析する力、話者から聞き出す力を持つ。こうした力を高専生に伝えていきたい。高専生に興味がある企業は、ぜひ就職支援事業部に問い合わせてほしい。