2022.11.16 【高専制度創設60周年特集】高知高専が手作り段ボール八木アンテナでKOSEN-1のビーコン電波の受信成功
手作りの「段ボール八木アンテナ」で、KOSEN-1のビーコン電波の受信に成功した(高知高専提供)
国立高専10校が共同開発、超小型衛星「KOSEN-1」
高専生が開発した衛星が宇宙へ―。国立高等専門学校10校が共同開発した超小型衛星「KOSEN-1(コーセンワン)」が2021年11月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケットによる打ち上げに成功した。プロジェクトマネージャーを務めた今井一雅高知工業高等専門学校客員教授・名誉教授は「各高専で宇宙衛星を共同開発するのは、究極のモノづくり教育だ」と力を込める。
新たな宇宙開発の道を開く
この衛星は、高知、群馬、徳山、岐阜、香川、米子、新居浜、明石、鹿児島、苫小牧の10高専の学生約50人(16~20歳)が2年半かけて開発した、木星電波観測技術実証衛星だ。
14年度に文部科学省の実践的若手宇宙人材育成プログラム「国立高専超小型衛星実現に向けての全国高専連携宇宙人材育成事業」、17年度に同省の宇宙航空人材育成プログラム「超小型衛星開発を通した高専ネットワーク型宇宙人材育成」に採択。さらに、18年にはJAXAの革新的衛星技術実証2号機の実証テーマに選定された。そして、同衛星はJAXAの内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)から21年11月9日、イプシロンロケット5号機により打ち上げられた。
同衛星は10センチメートル四方の立方体を縦に2つ重ねた超小型サイズ(2U-CubeSat)で、重量は2.6キログラム。高専側は新たな革新的取り組みとして▷超小型LinuxマイコンボードRaspberry Pi CM1ベースのOBC(Onboard Computer)による運用▷デュアルリアクションホイールによる超高精度姿勢制御▷木星電波観測用6.6メートル長ダイポールアンテナ展開技術―の三つの宇宙実証を掲げた。
実証実験の一つ目は、超小型で低消費電力のLinuxマイコンボードを衛星の心臓部となるOBCに使用し、常時衛星で運用に成功。また、衛星地球局からのコマンドによりOBCと連動した搭載カメラによる地球の写真撮影もかなえた。
世界初の姿勢制御実験にも成功。要となったデュアルリアクションホイールは、2つの平面モーターを反対に回すタイミングで姿勢制御を行う方式で、学生が手作りしたものだ。
今井客員教授は「参加した学生たちの成長は目覚ましく、新たにチャレンジする精神と忍耐力が養われた」と語り、「複数の高専がオンライン会議などを通じて情報を共有しながら開発に取り組む、連携モデルをつくることができた。モノづくり教育の新たな方向性を示せたのでは」と期待を込める。
高知高専の宇宙科学研究部の学生は、段ボールに導電性テープを貼って手作りした八木アンテナを考案し、KOSEN-1のビーコン電波の受信に成功している。この「段ボール八木アンテナ」は、KOSEN-1の衛星地球局がある、南国市ものづくりサポートセンターで実施された宇宙体験ワークショップでも活用され、子どもたちが衛星電波の受信に挑戦。子どもたちの宇宙への関心をさらにかき立てたようだ。
高専生たちによる衛星プロジェクトは継続している。超高精度姿勢制御と指向性アンテナを用いた海洋観測データ収集技術の実証を目的とした「KOSEN-2」が、JAXAの革新的衛星技術実証3号機の実証テーマの一つに選ばれた。
さらに、「KOSEN-3」も同4号機に搭載する実証テーマとして選定され、軌道維持用推進システムを搭載した次世代CubeSatの技術実証を予定している。
また、「KOSEN-4」に向けたアイデアとして、巻き尺を活用したログペリアンテナを搭載し、地球外知的生命体が発する電波を可視化するための情報を得る衛星を高知高専の1年生が発案するなど、活動は加速している。
「KOSEN」衛星は、高専におけるモノづくり教育の方向性を示すだけでなく、若者ならではの発想を促すことで新たな宇宙開発の道を開きつつある。
高専衛星開発をより活性化するために、KOSEN-1衛星などから送信されているビーコン電波を受信するダンボール八木アンテナキットを全国の高専にそれぞれ10セット配布する「高専衛星プロジェクトのイベント」を行います。イベントに対して皆さまからのご支援をお願いいたします。協賛プランは次の通りです。▶協賛金:50.000円▶協賛いただいた方への特典:①使用する段ボール八木アンテナに社名ロゴを掲載②プロジェクトのホームページに社名ロゴを掲載▶申し込み期限:2022年12月16日