2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23年各社の戦略  日立グローバルライフソリューションズ 大隅英貴取締役社長

大隅 社長

「自分時間」をキーワード
ユーザーニーズに応える

 昨年4月1日に社長に就任してからは、上海ロックダウンで製品が作れなかったり、素材価格の上昇や円安の進行などが続いたりし、厳しい船出となった。ただ、国内の家電や空調の需要は堅調で、俳優の芦田愛菜さんを起用した販促を展開するなどで、7月以降は、製品供給の正常化が進むとともに、徐々に販売につなげることができた。

 環境の変化に合わせ、電子基板など一部の生産を国内に戻している。生産体制については、基本的には地産地消が良いと考えている。人件費の差がほとんどなく、コストに見合う場所で製品は生産するべきだ。昨年から徐々に国内回帰を進めている。

 少子高齢化に加え、共働き世帯や単身世帯の増加など、日本の社会環境は変化してきている。こうした状況で家事負担を軽減したり、生活を豊かにしたりするものとして、家電への期待値が上がっていると感じる。高付加価値品を求める傾向が強まっているのも、そうした表れだろう。

 日立グループでは、社会イノベーションを掲げている。「デジタル×グリーン」で、社会にどう貢献できるかを追求している。例えばカメラ付き冷蔵庫では、庫内に残った食材の様子をスマートフォンで確認できるようにし、フードロス削減を提案している。こうした提案はユーザーからも評価され、販売にもつながっている。小型冷蔵庫「チール」では10色のカラー展開でインテリアに合う家具のような製品を提案している。外観部品などに再生プラスチックを40%以上使用したスティック掃除機など、循環型社会を意識した製品開発にも力を入れており、社会課題の解決や環境変化に対応する提案を強めている。

 IoT家電では、得られたデータを製品開発や品質向上に生かす取り組みを進めている。同時に、当社とユーザーが直接つながることができる「日立家電メンバーズクラブ」を、ユーザーにもっと喜んでもらえるように改良したいと考えている。現在は製品を登録すると家電のワンポイントアドバイスなどの通知が受け取れるようになっているが、よりユーザーとの接点がスムーズになるような、メンバーになる価値を実感してもらえるような存在にしていきたいと思っている。

 サービスとの連携もIoT家電では重要だ。リカーリングビジネスの立ち上げも視野に取り組んでいるところだ。昨年11月には家電のレンタルサービスを始めるなど新たな事業にも挑戦している。

 今年は、物価高が進む中で財布のひもは固くなりそうだが、家電は堅調な買い替え需要がある市場。ニーズに応える製品を出していくことで、ユーザーの期待に応えたい。

 巣ごもり需要がなくなった今、「自分時間」をキーワードに、自分への投資という意味でも、機能やデザインなどでIoT家電に価値を求めるユーザーは増えそうだ。こうしたトレンドを捉えるとともに、「デジタル×グリーン」を推し進め、社会貢献することで事業を成長させていく。