2023.01.11 【電子部品総合特集】日本電波工業 加藤啓美社長 「Vision2030」の達成

加藤 社長

 2022年9月に今年度通期の業績予想を上方修正し、売り上げ540億円、営業利益80億円に変更した。円安による押し上げもあるが、為替分を除いても今期は期初計画の売り上げ500億円以上を達成できる見通し。

 車載に軸足を置き、売り上げの約5割を車載が占める。スマートフォン向けは4Gでは苦戦したが、5G時代になり、フォトリソグラフィー技術を強みに攻勢をかけている。

 今年度から3カ年の新中期計画をスタート。最終年度の24年度の業績目標は売り上げ580億円、営業利益率11%だが現状のペースなら1年前倒しで23年度に達成できそう。対ドルの為替が110円だとしても計画線上で推移できている。

 自動車市場は、半導体不足に伴う減産はあるが、トレンドは上向き。車の世界生産台数は今後も5%ぐらいの伸びが期待でき、高機能化で水晶デバイスの員数も5%ぐらい上がっていく。トータルでは今後も車載用水晶デバイス市場は毎年10%ぐらいの成長が期待できる。自動車市場では半導体不足が継続し、車両メーカーは多くの受注残を抱えているため、半導体やハーネスなどの入手が解消されればフル生産に移行する準備をしている。

 とはいえ23年の市場を見通すのは難しい。中国ゼロコロナ政策や欧米の金利引き上げ、半導体不足などさまざまなファクターを見ていかないといけない。一番困るのは不景気になることなので、そうならないよう願う。

 23年度は、5G用小型基地局(RU)に期待している。RUでの小型・高精度要求に対応する7×5ミリメートルサイズのOCXO(恒温槽付き水晶発振器)で攻勢をかけていく。

 5Gスマホが主体であるため、4Gスマホの時のような消耗戦にはなっていない。フォトリソ加工技術は、まだまだ海外の競合などにキャッチアップされることはないと思う。

 中計3カ年で累計115億円の投資計画を発表。詳細は未定だが計画より4割程度増やしていきたい。追加投資の中身は増産投資よりも老朽化設備の更新やDX推進のための投資などが中心となる。

 今後も拡大均衡で成長戦略を描き、「Vision2030」の実現を目指していく。「社会価値」「経済価値」「人材価値」の三つの価値をバランスよく組み合わせ、社員がベクトルを合わせて一丸となって取り組む。