2023.01.12 【計測器総合特集】アンリツ 濱田宏一社長
濱田 社長
5Gなどで長期目標へ着実に成長
アンリツは「2030年度に連結売上高2000億円」を掲げており、23年はそのスタートとなる3カ年計画の最終年度だ。濱田宏一社長は「長期目標に向けて着実に成長している」と話す。
22年は半導体をはじめとする深刻な部材不足やスマートフォンの買い控えなどの影響で5Gビジネスが停滞。ただ、濱田社長は「5Gはこれで終わるわけではない」と力を込める。スマホだけでなくローカル5Gや車載、メタバースなど多様な領域への展開が5G普及の鍵になると見る。
このうち、ローカル5Gは、構造計画研究所と設立した新会社が中心となって事業拡大を図る。現状では実験検証の段階が多いものの、スマートファクトリーへの適用を視野に、温度計など各種ローカル5G対応機器の低価格化が進むにつれて普及が加速すると期待する。
車載向け5Gも注力分野だ。既に自動車OEMからTier1まで「アンリツの測定器が行き渡った状態」(濱田社長)。5G対応車種の広がりとともに「年々市場が大きくなっている」とし、さらなる事業の成長を見込む。
そのほかの通信計測でも有望な領域は多い。米国やアジアがけん引する400Gなどデータセンターの高速大容量化に対する測定ソリューションは非常に好調だ。スマホ向けほどのボリュームはないものの、6ギガヘルツ帯を開放した「Wi-Fi6E」など無線LAN専用測定器も堅調で、濱田社長は「特に高周波領域でアンリツの技術が生かせる」と自信を示す。
通信以外では、EV(電気自動車)と電池に注力。高電圧の充放電装置でバッテリーの特性を評価する。昨年買収した高砂製作所と協力して、環境計測カンパニーの売上高100億円達成を早期に目指す。
X線検査機や重量計のPQA事業は海外展開を重視し、M&Aも視野に入れる。
地震や水害へのリスクを低減した東北アンリツ第二工場の新棟が稼働を開始。再エネの自家発電を活用して主力製品の8割を生産する。ローカル5Gを導入し、ユーザーに向けた「モデル工場」と位置付けたい考えだ。