2023.01.12 【計測器総合特集】日本電計 森田幸哉社長

森田 社長

付加価値でビジネス領域広げる

 日本電計は、脱炭素化の流れを受けたEV(電気自動車)や燃料電池などの新エネルギー開発、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転などの開発投資が活発だった。

 部材不足の影響はあったが受注は好調で、上期を終えた時点で受注残高は前年同期比約80%増の約440億円に積み上がった。2023年3月期の売上高1000億円の計画について、森田幸哉社長は「達成に向けて順調」と手応えを語る。

 注力するADAS市場では昨年、JARI(日本自動車研究所)のテストセンターに国内初のADAS専用試験場が完成した。日本電計は受託試験専用の管理倉庫を構え、常駐スタッフがさまざまな安全技術に関する試験を実施している。

 自動車安全性能を評価する各国NCAP(新車アセスメントプログラム)に合わせた英ABダイナミクスの各種試験向け製品を取り扱う。走行シナリオが増加するなど試験要求の変化にも対応できる態勢を整えている。

 自動車の電動化に伴い、EMCの試験ニーズも増加。車両を収容してノイズによる誤動作などを評価する電波暗室の建設を施工管理部が担当し、計測器と設備を一式で提供できるのも強みだ。

 急増するバッテリー需要に対してはクロスエンジニアリング部がトータルシステムを提案。電池セルやパックなどインラインでの検査について、ハンドリング自動化などで大規模な案件を受注した。「付加価値を付けることで、検査器の領域からビジネスが大きく広がる」(森田社長)。

 充放電試験を行って電池の劣化具合を評価するのはソリューション推進部内の専門チームが担う。「部門をまたぎながらチームワークで一つのものを作り上げる成功事例が増えている」と森田社長。

 そのほか、5Gなど通信インフラ関係での引き合いも好調だ。

 昨年の社長就任を機に企業理念を再定義し、「計測技術で社会に貢献」を中核に据えた。年末には1人10万円のインフレ手当を支給した。従業員が安心して働ける環境を整えつつ理念の浸透を図り、強い組織づくりに励む。