2023.01.13 テックの先端、サッカースタジアム28面分で披露 ベガス全体が歓迎のCES
高精細、大型ディスプレーも見どころの一つ
メタバースやモビリティー、ロボティクス、スマート家電。米ラスベガスで5~8日にあった、世界最大規模のエレクロトロニクス関連見本市「CES2023」は、最新のデジタル技術などを使い、近未来の社会を築く提案が活発に展開された。コロナ禍が収束に近づきつつある中、昨年比約3倍という11万5000人の来場者でにぎわった。技術の将来が見えるとされるCESが、その形を変えつつ存在感を取り戻したようだ。
「新しい顔はここだ」。CESに詳しい専門家からそんな声が漏れたのは、ラスベガス・コンベンション・センター(LVCC)の西ホールだ。
CESは例年、市内を貫く幹線道路に近接する形で分散開催。北から「Tech East」「Tech West」「Tech South」の3エリアで構成される。開幕直前にプレス向けイベントなどが最南部のマンダレイ・ベイホテルで開かれた後は、これらエリアが主舞台になる。
会場で柱となるのが、LVCCのあるEast。日本や韓国など代表的企業の多くが集まり、中央ホールや北ホールには家電関連やセットメーカーなどが出展する。今回、お目見えしたのは西ホール。渡り廊下でつながっており、モビリティーやその関連技術の企業が集結。会場はモビリティーショーの趣になった。
さらに、存在感を増したのがWest。ベネティアンホテルや、ベネティアンエキスポ(旧サンズエキスポ=地元のカジノ運営大手・サンズの撤退で改称)の中のホールなどからなり、スタートアップが集まる「エウレカパーク」も見どころの一つとなった。
ラスベガスに詳しい方ならご存じのように、人口数十万の街に、年間数千万人が訪れるという世界有数の観光地。ホテルの一つ一つが大きく、数千室を擁するホテルが林立。各ホテルともおおむね、大きなカジノコーナーが入り口近くの便利な場所に構えられており、それを突き抜けないと会場に着かない。
また、LVCCの西ホールへの渡り廊下も延々とかなり歩かないといけない。主催者は、展示フロアの面積はサッカー場28個分という。記者らの万歩計は連日、2万~3万歩になった。
とはいえ、3年ぶりのフルスペックとあって、地元でも歓迎ムード。参加者向けの受付カウンターが空港にも設けられ、米国流の「もてなし」も見られた。
トレンド変化
CESは世界の変化に合わせて変貌してきた。かつては、テレビをはじめ家電の新製品披露が中心だったが、スマートフォンなどモバイル関連の技術が目立つようになり、近年は自動車の比重が向上。さらに自動車に限らず、ドローンなどを含めモビリティーの存在感が高まっている。
そうした中でも、モビリティーや製品だけを打ち出すのではなく、車室空間の中でのVR体験、自動運転とロボティクス、スマート家電、ドローンとFAといった融合が目立った印象だ。「モバイルからモビリティーへ」といったキーワードが、さまざまな場所で聞かれた。
象徴的だったのは、サムスン電子のスマートホームデバイス「スマートシングス・ステーション」。技術を300社以上に公開し、通信規格マターにも対応する。
さらに、昨年以上に前面に出たのはメタバース関連。米大手を中心に、プラットフォームを構築する動きが相次いだ。メタバースを活用してコンテンツ制作を支援するソリューションや、デジタルツインでの製造業や流通現場支援、メタバースの技術基盤などが打ち出された。
一方で日系勢は、大きなプラットフォームを打ち出すには至らないものの、センシングや画像技術などを中心に展開し、存在感を示した。中でも存在感を放ったのはソニー・ホンダモビリティ。また、パナソニックグループをはじめ、コンセプトと共に技術を展開する展示も光った。
CES2023から、さまざまな新トレンドをシリーズで紹介していく。
(16日付以降の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)