2023.01.16 【電子材料特集】信越化学工業 窒化ガリウム関連基板など 事業化へ量産体制を拡充
レーザーで狙った場所に転写された異方性導電膜により接続されたマイクロLEDチップ
信越化学工業は、窒化ガリウム(GaN)関連基板およびエピタキシャル膜製品の事業化に向け、量産体制を拡充する。
同社は2019年に米Qromis社と高品質で反りが小さいGaN成膜が可能な基板材料(QST基板)のライセンス契約を締結した。QST基板はCMOSプロセスに最適で、その特長から1800V以上の耐圧が求められるパワーデバイス、5Gおよび5G以降の世界向けのRFデバイスやマイクロLEDディスプレーなどへの適用が可能。
同社はQST基板に独自の改良を加え、6インチ、8インチのGaNエピタキシャル成長用基板の供給体制を整えた。Qromisとの連携によりさらなる高品質化を図るとともに、生産体制倍増への投資を進める。
さらに、子会社の信越半導体がサンケン電気からGaNエピタキシャル成長の技術供与を受けることになった。同契約により、信越半導体は国内外にパワーデバイスや高周波デバイス、発光デバイス用などのGaNエピタキシャル基板製品の製造・販売が可能になった。
ディスプレー関連では、同社は台湾の工業技術研究院(ITRI)とミニLEDディスプレー向け封止材を共同開発した。信越化学が開発した封止材の特長は①LED照明向けの封止材と同等の高透明性、耐光性②大面積の成型性③異種基材との高接着性、応力緩和。
ITRIは、ピクセルピッチ0.25ミリメートルおよび0.75ミリメートルのミニLEDディスプレーを新たに開発。同封止材を透明ディスプレーやフレキシブルディスプレーなどのLEDディスプレーに用いたサンプル評価を実施した結果、幅広いディスプレーへの適応が実証された。
信越化学はさらに、マイクロLEDディスプレー製造用の新規プロセス技術を開発した。同プロセス技術はデクセリアルズと共同開発したもので、「φ80マイクロメートル以下に個片化した異方性導電膜(ACF)をレーザーで狙った場所に転写する画期的な技術」を導入。同技術により、指定された電極にだけに個片化したACFを飛ばし、LEDチップを搭載可能となるため、マイクロLEDディスプレー製造時のリペアープロセスが容易となる。
また、グループ会社と共同で移送部品や移送装置を拡充。これらの移送部品との組み合わせにより、顧客に最適なプロセスを提供できる。