2023.01.18 【情報通信総合特集】市場/技術トレンド 複合機DXソリューション
エプソンは「スマートチャージ」の新製品でオフィス市場を開拓
電帳法やインボイス制度対応 クラウド連携で働き方改革を支援
事務機業界は、市場の回復を背景にDXソリューションを本格展開している。喫緊のテーマとなっているアナログからデジタルへの電子化では、今年は改正電子帳簿保存法(電帳法)や10月からのインボイス制度対応などが大きな山場を迎える。また、メーカー各社はクラウドサービスとの連携で、働き方改革、DXソリューションを強化。複合機などの製品戦略ではカーボンニュートラルを意識し、環境性能を前面に打ち出す傾向が強まっている。
長引くコロナ禍で厳しい市場環境にあった国内の複合機など事務機市場は、回復軌道に乗り始めた。2022年はコロナ禍に加え、半導体などの部材不足から来る製品供給難、サプライチェーンの混乱などが影響を与えた。さらに、複合機などの日本メーカーの生産拠点が集中する上海のロックダウンもダメージとなった。
こうした中、テレワークとオフィスのハイブリッドワークが定着し、新しい働き方に対応した需要が拡大。また、遅れていた中堅・中小企業のDXも本格化している。
メーカー各社は、従来のハード主体の「モノ」からソフトサービス主体の「コト」へと大きく転換し、ソリューション提案を活発化させている。
「デジタルサービスの会社への変革」を掲げるリコーは、サイボウズとの業務提携によるデジタルサービス事業の第1弾として、クラウド型業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus(リコー キントーン プラス)」の提供を昨年10月に開始した。中堅・中小企業向けの重点ソリューションとしてオフィスサービス事業のけん引役を担い、中堅・中小企業のDX支援につなげる。
また、業務用スキャナーのトップメーカーPFUの買収が完了したことから、入り口から出口まで一気通貫のソリューション、サービスでDX戦略を加速させる。
中堅・中小企業向けソリューションではパッケージ商品「スクラムパッケージ」、SIと連携した「スクラムアセット」が好評だ。
富士フイルムビジネスイノベーションは昨年5月末、中堅・中小企業向けソリューション「Bridge DX Library」の販売を始めた。
現在はラインアップを103種類へと大幅に拡充。電帳法、インボイス制度に対応したソリューションや、建設業、製造業など特定業種にフォーカスしたソリューションが好調だ。製造業や建設業向けソリューションは、同種ソリューションとの前年比較で2倍から1.5倍の販売となっている。
「中小企業を中心としたお客さまのニーズに応える形で、順調に販売を伸ばしている。各業種が抱える経営課題に対して、最新のITトレンドを踏まえた取り組みやすいソリューションをラインアップ」(同社)していることが好調の要因と見ている。
キヤノンマーケティングジャパンでは、「顧客層ごとにニーズは異なる。それぞれのニーズに適した顧客階層別戦略を展開し、サービス型事業モデルによる付加価値サービスの提供」(同社)に注力する。
新たに、大手から中堅企業向けにデジタルドキュメントサービス「DigitalWork Accelerator(デジタルワークアクセラレータ)」を昨年12月から提供している。業種・業務に合わせたサービスをシリーズ化することで、DXを支援していく。
第1弾として、電帳法などに対応してバックオフィス業務のプロセス変革を支援し、電子データの一元管理とデータの利活用を促進する「電子取引管理サービス」をリリースした。シリーズ化を図り、ラインアップを充実させていく。
セイコーエプソンは、使用状況に合わせてプランや機器を選べる「スマートチャージ」戦略を強化する。
2月にはスマートチャージ製品として、ボリュームゾーンのA3カラー複合機40~60枚機を投入する。これにより24~100枚機までラインアップが拡充するのを機に、複合機のメイン市場であるオフィス市場で本格展開をスタートする。環境性能に優れたインクジェット複合機で、オフィス市場戦略を加速させる。
同社国内販売会社のエプソン販売では、文教市場向けの「アカデミックプラン」や、医療現場の働き方改革支援策としてスマートチャージを提案してきたが、併せて、オフィスのDX提案に本腰を入れる。
コニカミノルタでは、これまでさまざまな顧客の課題を解決してきた実績のあるソリューション事例を、同様の課題を持つ顧客に提示できる形で再編集した「サクセスパック」を提案。昨年末までに約280種のソリューションをそろえ、Webサイトで約90種を公開している。
「特に中小企業は働き手が減少。IT人材が不足している。一方、テクノロジーの進歩は速く、多様化している。中小企業の課題を解決していく」(コニカミノルタジャパン)としている。
東芝テックは「ワークスタイル リノベーション」をコンセプトに、複合機「e-STUDIO」の新シリーズで、多様な働き方に対応した商品戦略を強化する。
企業のDX化の鍵を握っているのは紙文書のデジタル化だ。22年1月に施行された電帳法は2年間の猶予期間を経て、1年後の24年1月から義務化される。また、23年10月から消費税の仕入れ額控除の方式としてインボイス(適格請求書等保存方式)制度が導入される。
今年は、電帳法やインボイス制度への企業の対応が大きな山場を迎える。こうした法令への対応が業務の電子化のトリガーになるだけに、各社は積極的なソリューション提案で、企業の電子化を支援する。