2023.06.29 半導体業界、航空や防衛で取り組み相次ぐ ADIはソリューション発表、GFは大手と提携

GFとロッキード・マーティンの発表の様子

ADIの資料からADIの資料から

 半導体業界で、航空・防衛関連のソリューションを強化する動きが相次いでいる。米アナログ・デバイセズ(ADI)は、航空宇宙・防衛や計装、次世代ワイヤレス通信分野向け、先進のソフトウエア定義型信号処理ソリューションを発表。米グローバルファウンドリーズ(GF)は、チップのイノベーションに向けて米ロッキード・マーティンとの提携を明らかにした。

 データ集約型アプリケーションの増加で、エッジ側のデータ処理では、より広い帯域幅とより迅速なデータの処理・分析の必要性が高まっている。より高速のデータ変換や処理ができ、電子的試験の複雑さを減らせるソリューションが求められている。

 ADIが発表した「Apollo MxFE」はフェーズド・アレイ・レーダーや電子監視(GPSでの位置測定など)、各種試験・測定などに貢献する。

エッジ機器にも貢献

 新製品は、7~15ギガヘルツの新しい6G周波数帯と直接インターフェース可能な業界初の統合無線製品だ。最大10ギガヘルツの瞬時帯域幅に加え、最高18ギガヘルツ(Ku帯)の周波数のダイレクトサンプリングおよび周波数合成機能を提供。設計サイクルの短縮や新製品の迅速かつ低コストでの市場投入に寄与し、長期的に使用できる製品設計を可能にする。

 同社によると、データレートの高速化や遅延の抑制を、消費電力を低く抑えたままで実現したいという需要は業界を超えて急増。今回のプラットフォームの設計に組み込まれている柔軟性とシンプルさは、インテリジェントエッジ機器に関する将来のエンジニアリングデザインを変革する可能性を秘めているという。

 ADIの航空宇宙&防衛担当VPであるブライアン・ゴールドスタイン氏は「顧客の要件に対応できる設計の柔軟性とともに、シンプルなソフトウエア定義による設計変更を使用して、長期的に性能を強化していく」と訴求している。

国産強化に呼応

 GFとロッキード・マーティンは戦略提携で、マイクロエレクトロニクスシステムとサプライチェーンの強化を図る。

 パフォーマンスを向上させる最適化されたチップパッケージングのための3D統合を含め、先進的で次世代のチップ技術について、技術革新や安定的な生産を図る低電力かつ高速データ転送のためのシリコンフォトニクス(シリコン電子デバイスの製造技術をベースとした高密度光デバイス)や窒化ガリウム(GaN)技術で、チップが高温でも動作するようにする。

 両社は、チップをより迅速かつ手頃な価格で生産するためのチップレットエコシステムの開発にも取り組む予定。半導体技術のトレーサビリティー(追跡可能性)を向上させる。

 ニューヨーク周辺で取り組みが進むことを受け、地元議員は「複雑重要な電子部品の多くに『メード・イン・ニューヨーク』の刻印が押されることになる」と期待する。

 ロッキード・マーティンのジム・テイクレットCEOは「セキュリティー機能の提供は、安全に製造された半導体から始まる。国産マイクロエレクトロニクスへのアクセスを増やすために協力する」と意欲を示す。GFのトーマス・コールフィールドCEOは「レジリエントな半導体サプライチェーンを構築する」と展望した。

 両社の取り組みは、政権が進める半導体の国産強化に呼応したもの。