2023.07.21 【家電流通総合特集】省エネ家電補助金 各店の取り組み

キャンペーン期間中は店内に付与ポイントを分かるように表示(福島ダイイチ家電)

合展では省エネのエアコンを訴求(武田電機商会、右手前が武田社長)合展では省エネのエアコンを訴求(武田電機商会、右手前が武田社長)

補助金の利用を提案補助金の利用を提案

各種キャンペーンを利用(ユーニシヤマ)各種キャンペーンを利用(ユーニシヤマ)

個・合展などイベントで訴求

チラシやポスターなどでも

 全国の自治体が脱炭素社会の実現に向けて、家庭向けの家電に対する補助金施策を打ち出している。家庭において消費電力が特に大きい冷蔵庫やエアコンなどに省エネルギー性能の高いものへの買い替えを促進するものが多い。高騰している電気代負担の軽減の支援策としても取り組んでいるが、全国の地域電器店はこの制度を有効に活用している。取り組んでいる店の補助金施策の活用方法などをまとめた。

 補助金施策を個展や合展などイベントの場でアピールし、実績を高めた店も多い。店頭でのチラシやポスターなどによるアプローチも徹底している。

 パナソニック系のアクティ起明堂本店(岐阜県大垣市、大橋清久社長)は「ぎふ省エネ家電購入応援キャンペーン」などを活用して省エネ家電の販売を強化している。

 同キャンペーンの予算額は2億7000万円。7月18日午後3時点での受け付け状況は、到着件数が4634件、申請額は1億6592万円となっている。申請額の合計が予算の上限に達した時点で終了する。対象の家電は、エアコンと冷蔵庫・冷凍庫で、20万円以上の購入で4万円、10万円以上20万円未満で2万円の補助がある。

 メーカーによるキャンペーンでエアコンを複数台購入すれば特典が得られる。申請のわずらわしさから敬遠しがちな高齢客などは、スタッフから丁寧に教わることで省エネ性能の高いエアコンの購入に踏み切るという。

 節電への関心の高まりに対しては、冷蔵庫や洗濯機などのキャンペーンを利用しながら特別価格で提供し、高機能タイプへの買い替えを推奨している。6月の個展ではポスターなどで補助金の利用を提案していた。

省エネ意識高まる

 三菱電機ストアの武田電機商会(兵庫県加古川市、武田善信社長)は、兵庫県、加古川市で始まっている省エネ家電補助金施策に合わせて7月8、9日に個展を開催。これまでに大型の冷蔵庫を3台販売、エアコンも6月中旬から三菱電機のZタイプを10台販売した。

 兵庫県は兵庫県電機商業組合と連携して7月1日から省エネタイプの冷蔵庫を対象とした「省エネ家電買い替え促進事業」を開始した。1万円の補助がある。加古川市は6月中旬から省エネの冷蔵庫、エアコンを対象とした省エネ家電補助金制度をスタート。製品価格の15%、上限で5万円の補助がある。個展では、これらの施策をアピール。ほとんどのエアコン、冷蔵庫が上位機種だった。

 武田社長は「市内で認定を受けた店は県、市との補助を併用できる。省エネへの意識がより高まる。個展での来場者は42世帯だったが、ほとんどの人が目的買いだった」と話す。制度がスタートする5月中旬には合展にも参加したが、ここでもアピールを強化していた。

 パナソニックショップの住まいるネット茶屋町店(岡山県倉敷市、兼高政茂社長)は、倉敷市で7月から始まった省エネ家電補助金に合わせ、6月23~25の3日間に個展を開催。エアコン・冷蔵庫・温水機器を対象としており、個展では予約販売を推進。冷蔵庫は30台の予約を獲得した。

 個展では、招待状を700世帯分を配布。補助金が始まることをアピールしたほか、冷蔵庫などの予約販売を強化。家電本体費と工事費の4分の1の額、最大5万円を補助があることを提案。個展では整骨院のスタッフが、もみほぐしを行うイベントも実施。来場者を喜ばせたという。

 パナソニック系の福島ダイイチ家電(福島市、國分秀夫会長)では、福島県が2月末スタートした「省エネ家電購入応援キャンペーン」に合わせ、対象商品のエアコン、冷蔵庫、LED照明機器、エコキュートの販売に注力、販売を伸ばした。

 キャンペーンのスタートに合わせ、店内には対象商品購入でキャッシュレスポイントに交換できることを手書きで分かりやすく表示した。販売に当たっても4月上旬には予算額が少なくなってきたことから、エアコンの設置などは時間のある時に回し、顧客への販売に注力した。

 國分会長は「地域電器店からの購入で量販店などからの購入に比べ、ポイントが倍になる魅力的なもの。いつもは量販店から購入している人も訪れ、購入が進んだ。普段は不具合や故障からの買い替えが中心だが、早めに購入するケースもあった」と話す。

 3月中旬に開催した福島合展でも販売が伸びている。「対象商品の中には品薄になる商品もあり、入荷に時間がかかった」と國分会長は話している。

訪問や丁寧な説明でお客に提案

 一方、電器店が強みとする訪問、丁寧な説明やサポート力を生かし、省エネ家電補助金を活用しやすい環境をつくる店も。

 千葉県四街道市では、7月18日から「四街道市省エネ家電製品等購入補助金事業」が始まった。

 石井電器(千葉県四街道市、石井良太郎社長)には、配布された市政だよりに補助金の記載があったことから、開始日前から問い合わせがあったという。「16日の日曜日あたりから、火曜日に付けてほしいという引き合いが増えてきた」と話す。

 今回の予算は、2022年11月~23年2月の前回分とほぼ同額。前回の実施で認知度も上がっていることに加えて現在、県で実施中の「ちば省エネ家電購入応援キャンペーン」の第2弾との併用も可能。石井社長は「(開始から)1週間は様子を見る」と言う。

 冷蔵庫やエアコンなどの買い替えの追い風になるものの、繁忙期のこの時期にさらに依頼が舞い込んでも、対応できる件数には限りがあるため「積極的な販促はしにくい」(石井社長)としている。

早めに準備し販売

 福島市にあるふくでんタカハシ(高橋薫社長)でも、キャンペーン対象商品を中心に販売が伸びた。キャンペーンスタートが新聞などで報道されたこともあり、スタートに合わせて早めに準備を行い、販売に備えた。報道などでキャンペーンを知った顧客や新規客からの問い合わせも多く寄せられ、対応に追われた。

 高橋社長は「早めに準備した店は販売が伸びている。問い合わせも多く、キャンペーン対象商品をしっかり説明しながら販売に努めた。売り上げも前年を上回って好調だった」と話す。「ただ少し家電品の先食いもみられ、今後は動きが少し落ち着いてくるのではないか」という。

 パナソニック系の野口電器(福岡県広川町、野口大樹社長)は、今年3月まで実施していた「広川町省エネ家電製品買換え促進補助金」を活用して、XSシリーズエアコンなどの販売につなげた。

 昨年12月20日以降に購入した冷蔵庫、テレビ、エアコンの3品目のうち、省エネ基準達成率100%以上の機種が対象となる。補助金額は購入・設置費用の10分の3(上限4万5000円)。

 申請条件が厳しい点など不満点もあったが、電気代高騰の影響で補助金が商談成立に役立つシーンも多かったという。申請書記入の手助けなど、きめ細かなサービスで地域店の強みをアピールするきっかけにもなった。

 福岡県南部の八女市でも、統一省エネラベルが星3以上の冷蔵庫や冷凍庫、星1・1以上のエアコンやテレビに買い替える際に、市が購入合計額の半分を支給する補助金制度を2月まで実施した。

 昨年4月以降に購入した家電が対象。補助額は、量販店などで購入する場合は最大5万円、地域電器店など市内に本店がある店舗では最大7万円となる。

 パナソニック系のでんきのアズ八女店(福岡県八女市、弥永賢伸店長)は、昨年4月以降に対象商品を購入した顧客に電話などで補助金について説明。200世帯以上が対象となり、年末年始は申請に必要な書類の整理に追われたという。量販店の利用客が訪れるなど、新規獲得にもつながった。

 パナソニック系の高田電気(同、高田秀康社長)でも、補助金が発表されるとすぐに提案を始めた。エアコンや冷蔵庫で省エネタイプへ買い替える動きが出ていて、例年の同時期よりも販売のペースが良かった。

 パナソニック系のユーニシヤマ(三重県松阪市、西山裕貴社長)は、省エネ家電関連のキャンペーンを使い、高機種のエアコンやエコキュート、冷蔵庫の販売が好調に推移した。

 対象の省エネ家電を購入した三重県民にキャッシュレスポイントなどがプレゼントされる「みえ省エネ家電購入応援キャンペーン」(現在は終了)や、リフォームで活用できる「こどもエコすまい支援事業」、メーカーからのキャッシュバックなどの利用で、省エネ機能の高いエアコンやコキュートなどがよく売れた。現在は指定のエアコン・冷蔵庫に買い替えるとキャッシュレスポイントがもらえる中部電力の「省エネ家電買替キャンペーン」もある。

 設置から10年以上たち、買い替え時期のエコキュートやエアコンは、補助金が利用できるのに品不足で販売できないという事態に陥らないように、グループ力を生かして在庫を豊富に確保した。