2023.08.25 【育成のとびら】〈9〉すれ違い予防の第一歩は、伝える側・受け取る側のスキルの可視化

 「ちゃんと伝えたのに理解力が足りないから伝わらない」という上司。「説明が長過ぎて要点が分かりにくい」という部下。お互い言葉に出すことはあまりないが、内心こんなことを思った経験のある人は多いはずだ。

 ビジネスコミュニケーションには、情報を伝える側、受け取る側、それぞれの難しさがある。「理解・認識のズレ」を防ぐための最適な対策も職場によってさまざまだろう。

 こうした問題を探るべく、当社ラーニングエージェンシーとラーニングイノベーション総合研究所は、今年2~3月にかけ当社の研修受講者614人を対象に、現場のビジネスパーソンらがそれぞれ実践している工夫や重視している事柄についてアンケート調査を行った。

 今回は、この結果をもとに伝える側、受け取る側の両面からミスコミュニケーションの解決策を探っていきたい。

 まず、「コミュニケーションにおいて認識や理解のズレを起こさないために何が大切だと思うか」との質問に対し、最も多かった回答が「お互いの認識が合っているか確認し合うこと」(88.1%)で、「情報を伝える側がもっと分かりやすい言葉を使うこと」(50.3%)、「情報を受け取る側がもっと理解力をつけること」(31.9%)と続いた(図)。

 さらに、伝える側、受け取る側に立った際に「実際に行っている工夫」をそれぞれ質問したところ、伝える側は「相手が理解しやすい言葉の使用や資料作り」が66.3%で最多。「一気にまとめて話さず、短いまとまりで相手の理解を確認しながら伝える」(38.1%)、「PREP法(結論から話す話法)などを使い、相手が理解しやすいように伝える」(36.5%)が上位に挙がった。

復唱やメモを

 受け取る側は、上位から「こちらの認識が正しいか自分の言葉で復唱して確認」(59.1%)、「話のポイントや押さえるべき点を聞くようにしている」(53.1%)、「認識がズレないように、なるべく全ての話のメモを取る」(46.3%)となった(いずれも複数回答)。

見えにくい理解力

 アンケート結果では、情報を受け取る側の努力より、伝える側の努力が大切という答えが上回った。その背景には、伝える側はアウトプットになるためコミュニケーションのスキル(能力)が可視化されやすいという傾向があるだろう。

 一方、受け取る側はインプットになるため、スキルが他者から見えにくく、改善すべき課題に挙がりにくいのかもしれない。

 しかし、本来のよいコミュニケーションというのは、伝える側と受け取る側との双方の認識が合致して成立するもの。ミスコミュニケーション解消の第一歩として、ブラックボックスになりがちな、受け取り手のスキルの可視化が挙げられるのではないだろうか。

 アンケート結果でも支持が集まった受け取る側の「復唱」「メモ」という工夫は、その可視化の一つの手立てといえる。

 次回は、コロナ禍で急速に増えたオンラインコミュニケーションにおける、認識・理解のズレについてアンケート結果をもとに考察する。(つづく)

 〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉

 【次回は9月第2週に掲載予定】