2023.08.31 上下水道使わず水を再生・循環 WOTAが住宅で実証実験開始 日本の水道問題解決に新たな一手
既存の浄水場による大規模集中型システムに対し、WOTAの開発する小規模分散型システムの利点を説明する前田CEO
水の再生・循環システムを手掛けるWOTA(東京都中央区)が、従来の上下水道を使わず、住宅ごとに設置する小型な水循環システムで生活用水を100%賄う実証実験に乗り出した。住居が集中する都市部のような効率的な上下水道を整備しにくく、老朽化設備の更新が財政的に厳しい過疎地や島しょ地域で、住宅ごとに設置するシステムを試験導入。水の利用状況や処理設備に関わるデータを取得し、2030年までに全国的に導入できる標準モデルを確立する。40年には、自治体が上下水道の財政バランスを取れるシステムに仕上げたい考えだ。
日本の上下水道は、大規模な浄水場を配管でつないで各家庭に水を届けている。設備の維持・更新では、配管コストが自治体にとって財政負担として重くのしかかっているのが現状だ。特に人口が少ない地域の自治体では、浄水場からの距離が遠く、配管が長くなるにも関わらず、水道料金の収入が少ないというアンバランスな状態となり、慢性的な赤字に陥っている。
こうした状況を打破しようとWOTAは、住宅ごとに設置する小規模分散型水循環システムを開発。98%という排水回収率を生かし、雨水なども活用しながら飲料用も含めて生活用水全てを賄い、上下水道が抱える課題解決を目指している。
実証実験では、人口約300人が住む島しょ地域の東京都利島村の住宅1軒にWOTAのシステムを導入した。さらに過疎化が進む愛媛県西予市にも8月22日、住宅1軒に設置。10~11月の運用開始を目指し、今治市と伊予市にも1軒ずつ導入予定だ。
東京都内で31日に開催した説明会で、前田瑶介代表取締役兼CEOは「日本の上下水道の歴史が変わる日だ」と強調。小規模分散型水循環システムの普及を加速していく考えを示した。
(後日、電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)