2020.03.02 【ICT展望2020】TOA・竹内一弘社長
竹内社長
減災・防災、インフラ系に注力
―20年3月期第3四半期(19年4-12月)連結決算は減収減益でしたね。
竹内社長 売上高は前年同期比3.7%減の12億円の減収となり、利益も前年同期を下回った。粗利益率は前年同期比0.6ポイント上がり44.68%だったものの、販管費は前年同期より3億円、2.6%増えた。
将来に向けてしっかり設備投資を行い、人への投資も増やしたためだ。第4四半期に日本国内販売と鉄道関連でどれだけカバーしていけるか、頑張っていきたい。特に減災・防災、インフラ系に力を入れていく。
―具体的には。
竹内社長 減災・防災では、明瞭な屋外防災放送のためのホーンアレイスピーカ、スリムスピーカの中間商品として半特注で対応している中型ホーンアレイスピーカが1、2月と売れている。3月まで中型ホーンアレイスピーカの販売本数を積み上げていく。減災・防災高性能スピーカはこれまでに260自治体へ1万1000本以上を販売した。今期の減災・防災市場向け売上高は前期比1.7倍になると見ている。
スピーカを15メートルごとに2個設置することが消防法で決まっているが、消防法の設置個数だけでは情報を確実に伝えられない場合には、スピーカの数を増やし、しっかり聞こえるように提案していくことが大事だ。
―インフラ系は。
竹内社長 インバウンド対策として、新開発の多言語放送サービスシステムで外国人に情報をしっかり伝えることを提案していく。非常放送システムに多言語放送サービスを組み込む試みもしている。都営地下鉄五反田駅の改札口では音声明瞭化技術の実証実験を行った。駅構内アナウンスの明瞭化システムによって改札窓口の問い合わせ件数が減り、駅員の業務負担の軽減という働き方改革にもつながることから、ほかの駅や鉄道会社にも積極的に提案している。
公共空間において、マイクロホンで検出した暗騒音やカメラで検知した人数に応じてアナウンス音量を変化させる、音と映像の専門メーカーならではの新しい価値の提供にも取り組んでいる。
―いつも話されている〝音の報(しら)せる力〟ですね。
竹内社長 音へのこだわりを様々な市場、分野で広げていきたい。オフィスや会議室、教室で聞きづらい場合は、きちんと声を届けるストレスフリーの提案が大切となる。
12月には宝塚事業場(兵庫県宝塚市)に、新しい価値を共に創り出す共創の場の新拠点ナレッジスクエアをグランドオープンさせる予定だ。開発者でない人も集めて年間6000人に来てもらい、協業できる形が整えられると思う。
開発者が自分の開発テーマに没頭するだけでなく、19年7月、東京・大手町に開設したpoint 0 marunouchiやウィーワークのコワーキングスペースなどで、いろいろな企業や人とつながり協業していくことも進める。
―21年3月期に取り組むことは。
竹内社長 中期3カ年経営計画の最終年度だ。成長のための投資を行ってきたので、しっかり回収する年にしたい。また、次期経営計画を策定する年でもある。企業価値「Smiles for the Public-人々が笑顔になれる社会をつくる-」に向けて、音や映像関連のストレスフリーをどう実現するか、5年先、10年先を見据えて計画を策定していく。