2023.11.08 複合機各社、商業印刷業のDX化提案  産業印刷ではテキスタイル分野にも注力

キヤノンは、Canon EXPO2023でvarioPRINT iX1700を初公開

 商業・産業印刷市場のデジタル化が本格化している。複合機各社はオフィス市場が成熟化する中、商業・産業印刷を成長分野に位置付ける。商業印刷では、製品戦略にとどまらず、商業印刷業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化に向けた経営視点からの提案も活発化。産業印刷では、ラベルやパッケージ印刷に加え、布・織物などテキスタイル分野のデジタル化に力を入れる。

 商業印刷市場では主流のオフセット印刷からデジタル印刷へのシフトが進み、現状、市場のデジタル化率は約10%。今後も着実な成長が見込まれる。デジタル印刷はデータから紙に直接印刷する手法で、物理的な「版」がなく、小ロット印刷や、必要な時に必要な分だけ印刷するオンデマンド印刷、印刷需要に柔軟に対応するバリアブル印刷などを実現する。

 印刷プロセスの自動化・効率化を促進するため、人手不足などの人的課題も抱える商業印刷業のDX化への期待も高い。

パートナー企業と連携

 富士フイルムビジネスイノベーションは「Add value from DX」をコンセプトに、パートナー企業とも連携したDXエコシステムを提案。この一環として「スマートファクトリー」「マーケティングDX支援サービス」に注力している。

 スマートファクトリーでは、大量印刷を前提としたオフセット印刷の工程管理や熟練技術者依存(属人化)などの課題に対応。生産工程を可視化・分析して工程改善を図り、最大40%の工数を削減する。

 また、顧客接点(店舗、Webサイト・デジタル広告など)から得られるデータを統合し可視化・分析するサービスで、企業のマーケティング領域のDXを支援する。

価値共創に取り組む

 リコーは、印刷業者およびビジネスパートナーとの価値共創に取り組むプラットフォーム「RICOH BUSINESS BOOSTER」で、印刷アプリケーション、生産工程の自動化、省人化などを提案している。また、フラッグシップモデルとなる新製品「RICOH Pro C9500」を投入。商用印刷領域での多様化するニーズに応えるため、用紙対応力と自動化・効率化機能を強化した。「商用印刷の現場の業務効率化を推進していく」(同社)。

デジタルプレス新製品

 キヤノンは、商業印刷向けB3サイズ対応インクジェットデジタルプレスの新製品「varioPRINT(バリオプリント) iX1700」を来年4月に、産業印刷市場向けにはインクジェットラベル印刷機「LabelStream(ラベルストリーム)LS2000」を来年8月に国内発売する。商業・産業事業を新規成長分野と位置付け、戦略強化を加速させる。先に開催のCanon EXPO 2023で初公開するとともに、AGV(無人搬送車)を活用した生産プロセスの自動化などを訴求した。

 コニカミノルタは「創注・受注拡大支援」と「生産性向上支援」の2軸で商業印刷のDX化を推進し、印刷業界のビジネス成長と収益力向上に力を入れる。

 印刷現場の課題解決を図るモノクロデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオプレス)7136シリーズ」2機種を9月から順次発売。熟練技術者不足に対応し、高度で緻密な調整業務をスキルレスで行えるかんたん設定機能など、省力化ニーズに応えている。

インクジェットで

 セイコーエプソンは、商業・産業プリンティングイノベーションを展開し、インクジェットによるデジタル印刷で、多品種少量生産、環境負荷低減、労働環境改善をアピールする。また、分散印刷での高度な色合わせ・生産管理などに対応するトータルソリューション「Epson Cloud Solution PORT」に力を注ぐ。早くからデジタル捺染(なっせん)も強化している。

エプソンは、デジタル捺染でYUIMA NAKAZATOとパートナーシップ

 京セラドキュメントソリューションズは、商業印刷のカスタマイズ、オリジナル印刷需要に対応した「TASKalfa Pro15000c」に力を入れる。京セラは、同社独自のデジタル捺染印刷機を開発して本格的にデジタル捺染市場に参入。アパレル業界における大量に使用する水の汚染問題の解決にも取り組んでいる。