2024.01.05 【年頭所感】情報サービス産業協会(JISA) 福永哲弥会長
福永 会長
発信力高めデジタル社会をけん引
生成AI活用を検討し提言
2024年、情報サービス産業協会(JISA)は設立40周年を迎える。この間、わが国はバブルからバブル崩壊、そして「失われた30年」の間、正に「激動」の時代を生き抜いてきた。しかし、それを「激動」と呼ぶのがはばかられるほど、昨今の内外の社会・経済情勢は「激動」「混迷」の極致にある。
コロナは落ち着きを見せてきたものの、一昨年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻は、今なお解決の糸口さえ見えないままである。その一方、中東で新たな戦火が広がり、われわれは平和国家日本のあるべき姿や果たすべき役割に思いをはせながらも、目の前の食料やエネルギー価格の高騰に動揺し、日々の生活の防衛策に腐心せざるを得ない状況といえよう。
そうした中、経済・社会のデジタル化はいや応なく進展してきた。何よりも「価値の源泉」「稼ぐ力の由来」が、徐々に、しかし鮮やかに「デジタルの領域」に移行してきた。そして、その中で私たち情報サービス産業は、広くわが国の経済・社会の基盤となる情報インフラを担い、他の全ての産業と一体となって新たな価値を創出し、また、生産性の向上に寄与するとともにさまざまな社会課題を解決してきたと自負している。
昨年はとりわけ、デジタル化の加速度的な展開を、社会全体が驚きを持って見つめ続けた一年ではなかったか。もちろん、その中心には、生成AIの開発とその進化があった。こうした流れがどこに向かうのか、どう変容するのか、産業人としても個人としても、しっかりと見据える必要があると考えている。
政策提言委員会
さて、新しい年において、私たちJISAは、何をしようとしているのか。実は昨年6月のJISAの新体制発足に合わせ「政策提言委員会」を創設した。来たるデジタル新時代にあって、デジタルのプロ集団であるJISAが、社会のデジタル化をリードし、そしてそのために、政府や中央官庁、社会に対する政策提言機能、発信力を飛躍的に高めるべきではないかとの思いでJISA自体の改革を遂行している。
そしてその念頭にある中心的な分野は、生成AIだ。「産業革命級」とも言われるように、生成AIの社会的インパクトには驚くべきものがある。ただ一方で、誤情報の拡散や著作権の問題など負の側面もあり、また生成AI利活用の程度により個人の強者弱者といった格差を助長する恐れもある。JISAでは、そのような光と影の部分の両方を見ながら、生成AIの活用の在り方を検討し、提言していきたい。
人が輝くデジタル社会の形成
このほか、高度デジタル人材の育成の問題や、ガバメントクラウドへの対応も重要な社会課題と認識している。JISAは日本政府のほか、さまざまな関係者と緊密に連携しながら「誰一人取り残されない、人が輝くデジタル社会の形成」に向け、さまざまな取り組みを進めていきたいと考えている。