2024.03.21 仮想空間で通信システム大規模検証 NICT、「ワイヤレスエミュレーター」推進へシンポ
ワイヤレスエミュレーターで可視化した無線機関の伝搬損失の例
情報通信研究機構(NICT)は21日、仮想空間で通信システムの大規模検証を行うワイヤレスエミュレーターの研究成果を披露する「ワイヤレスエミュレータ利活用シンポジウム」を都内で開催した。高速通信規格5Gの次世代型であるビヨンド5G(6G)など将来の無線通信の研究開発に関わる企業・団体から、会場とオンラインを含め250人を超える関係者が参加した。
総務省では、多様な電波利用システムを仮想空間で高精度に模擬する大規模なワイヤレスエミュレーターを開発する「仮想空間における電波模擬システム技術の高度化」事業を展開している。NICTは2020年度から同事業を4年間のプロジェクトとして受託し、シンポジウムなどを開催している。
この日のシンポでは、NICTの茨木久理事が「通信料の増大に伴う電波の相互干渉などが課題となる中、物理的な制約を受けない仮想空間上で低コスト・高精度に電波システムが検証できる技術として世界的にその意義と重要性が認められ、研究開発が進められている」とワイヤレスエミュレーターの意義を強調。総務省の荻原直彦電波部長は「コストや時間の長期化がローカル5G普及の大きな壁になっている」と指摘した上で、「今年度はプロジェクトの最終年度になるが、ローカル5Gを実際のシステムに当てはめて使ってもらうには来年度以降も実用化に向けた取り組みを進めていくことが重要だ」と強調した。
「デジタルツインを支えるワイヤレスエミュレータへの期待」を演題に特別講演したKDDI総合研究所の小西聡取締役執行役員副所長は「6G時代に向け今後、新しい周波数の割り当ても期待されるが、周波数が高くなるとカバーできるエリアが狭くなる。エリアを広げるために、電磁波の反射方向や強度を自由に制御できるメタサーフェス反射板の最適な設置角度を事前に仮想空間上で想定できれば非常にありがたい」などと実例を踏まえながら有効性に言及。「将来的には月や宇宙空間にカバーエリアが拡大する際にも活用できるのではないか」と展望した。(詳細は25日付の電波新聞/電波新聞デジタルに掲載します)