2024.10.16 目指すは「ドラえもん」 AIと人の関わり、体験型コンテンツで実演 アーティエンスと日大が共同研究

障害物をどけるなど人の手助けが必要なHAIの体験型コンテンツ「トモニゴー」実演の様子

アーティエンスが展示した「トモニゴー」アーティエンスが展示した「トモニゴー」

丸山グループリーダー(左)と大澤准教授丸山グループリーダー(左)と大澤准教授

 15日に開幕した国内最大級のデジタルイノベーション総合展示会「CEATEC2024」。出展者の半分ほどがAI(人工知能)関連という中、来場者の関心を集めていたのが、AIやロボットなどの「エージェント」と「人」との関わり方を研究テーマにするHAI(ヒューマン・エージェント・イントラクション)の体験型コンテンツを展示したartience(アーティエンス、旧・東洋インキSCホールディングス)だ。

 アーティエンスは、日本大学文理学部情報科学科大澤研究室とHAIの体験型コンテンツ「トモニゴー」を共同開発。AIエージェントのキャラクターが、IoTでつながったロボット掃除機などの家電を操りながら、実空間にある小さなボールをゴールまで運ぶゲーム感覚のコンテンツだ。

 部屋の中をモチーフにしたコースの途中にある障害物は人の手で取り除く必要がある。人が手助けすることで人間らしい愛着を持てる体験を目指している。

 ブースは、手書きタッチの背景で、柔らかな色を使って優しい印象になるよう意識して作った。来訪者の反応も良く、「部屋をイメージした展示で、住宅メーカーの方からは『(HAIの実装で)気遣ってくれる同居人がいるみたいですてき』という声もいただいた」(大澤正彦准教授)と手応えを語る。

家電への搭載めざす

 今年4月、大学と企業のオープンイノベーションとして、アーティエンスと大澤研究室はHAIの共同研究を開始。AIエージェントの家電への搭載を目指し、今後は家電メーカーにHAIへの参画を働きかけたい考えだ。

 アーティエンスは、これまでの企業活動で培ったノウハウを生かし、大澤研究室のHAIの研究成果を社会実装することを目指している。HAIの導入を検討する企業とつなげる役割を担う形だ。

 アーティエンスのR&D本部次世代技術研究所データソリューショングループリーダーの丸山健次郎氏は「AIに“心”が加わるHAIの考え方に感銘を受けた」と述べ、企業にHAIの研究活動に興味を持ってもらいたいと考えている。

 開発に携わった大澤准教授は「今回の展示結果も研究したいと考えている。世界にどう馴染むのかを考えていきたい」と話す。年内にはデータを集計し、論文として研究成果の発表を目指す。

 大澤准教授は「『ドラえもん』を作りたい」という思いのもと、10年以上HAIの研究に携わってきた。幼少期から、藤子・F・不二雄が生み出した「ドラえもん」の主人公・のび太に自身の姿を重ねていたという。のび太と、ひみつ道具で助けてくれる「ドラえもん」の温かな関係性の実現を目標に据えて研究を続ける中、2020年4月に研究室を立ち上げた。

 AIと人間が互いに補い合う関係になることで、「不便が楽しい。手間はかかるが、コミュニケーションの時間になる」(大澤准教授)とする。HAIの研究が進むことで、人のAI利用の変化につながると見ている。