2025.01.14 【電子材料特集】各社の事業展開 中興化成工業

末石 執行役員

半導体ビジネス本部を昨年設立

次の成長に備え生産能力増強

 中興化成工業は、フッ素樹脂などの高機能樹脂の総合加工メーカー。フッ素樹脂は蛍石由来の樹脂材料。特性は、非常にタフな材料であり耐熱性や耐薬品性に優れる。260度までの高温からマイナス180度などの低温でも変質しない。電気絶縁性や誘電特性、滑り特性、耐候性などの特徴も併せ持つ。一方で加工が非常に難しい材料でもある。

 同社は1963年に設立され、長年、フッ素樹脂加工での課題解決に取り組んできた。高度な加工技術を強みに一品一様で顧客の要望に合わせた加工を行う。

 同社は、半導体製造装置向け部材事業強化のため、2024年4月に「半導体ビジネス本部」を設立した。末石将之執行役員半導体ビジネス本部長は「半導体製造装置用パーツの市場は25年度上期までは調整が予測されているが、長期スパンでは必ず市場が拡大する。次の成長期に備え、生産能力増強に努めている」と話す。

 同社は24年4月に、「F1松浦工場」(長崎県松浦市)の敷地内に新工場「F1 EAST WING1(エフイチ イースト ウイング ワン)」を稼働させた。同工場稼働により、重点製品の半導体製造装置向けPTFE一体槽の生産能力は従来比1.5倍以上に増強された。さらに、生産力向上のため新工場も計画中で、「3年以内の竣工(しゅんこう)を目指している」(末石執行役員)。

 同社が製造するフッ素樹脂製の「ダイアフラム」は、24年1月に月面着陸したJAXAの月探査機「SLIM」に搭載された。ダイアフラムは通常は金属やゴム製だが、同社製ダイアフラムはPTFE100%で約1ミリメートル以下の薄肉加工品。

 同社ではこのほか、薬液供給用チューブや断熱用の多孔質チューブ、溶接ボックスなどの拡販を推進する。

 フッ素樹脂加工技術を生かし、端材のケミカルリサイクルの検討も所属する日本弗素樹脂工業会(JFIA)と連携して進める方針。異種材複合化技術や、PTFE以外のプラスチック成形技術なども開発テーマに掲げる。