2025.01.17 【情報通信総合特集】2025市場/技術トレンド ITサポートサービス
システムを安定稼働させるためのサポートサービスへの期待が高まる
専門企業に保守運用を委託
マルチを前面に提案
IT(情報技術)システムなどを安定稼働させるための保守運用をいかに効率よく行うかへの関心が高まっている。
情報システム部門の人員が限られることからサポートサービスを行う企業へ保守運用の一部を委託する動きもある。SI企業が構築したシステム運用をITサポートサービス専門企業に委託するケースも出てきた。全国に保守網を持たないIT機器ベンダーが保守を委託する案件も増加。2025年はITサポートサービスがさらに注目を浴びそうだ。
企業や自治体などの情報システムは、クラウドやAI(人工知能)といった最新のデジタル技術を使った環境構築へと移行する中、システムを安全に安定して運用していくことが従来以上に求められるようになった。
各業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み、ITシステムのモダナイゼーション(近代化)を進める動きが活発だ。それに伴いシステム環境には複数メーカーのハードやソフトが組み合わされ、クラウドサービスを含めたシステム運用が求められるようになり、情報システム部門の負荷がこれまでよりも高まっている。さらに、サイバー攻撃などが高度化している背景からセキュリティー対応も急務になっている。
半面、人材不足が顕在化しており、複雑化するシステムを限られた技術者らでいかに安定運用させるかも大きな課題。そこで注目されているのが、システムを保守運用するITサポートサービス企業の存在だ。
全国に保守網を持ち、障害発生やトラブル時に速やかに現地に駆け付けて対応するだけでなく、インターネット経由での遠隔保守や、セキュリティー監視、データセンターでの運用なども行う。このサービス網を求める声がここにきて増えてきた。
ITサポート各社として、メーカー系ではNECグループのNECフィールディングをはじめ、富士通グループのエフサステクノロジーズ、日立製作所グループの日立システムズ、OKIグループのOKIクロステック、東芝グループの東芝ITサービスなどがある。
各社はこれまで全国の保守拠点網を生かし自社グループの製品保守を中心に支援していたが、現在は多くの企業が複数メーカーのハードやソフトでシステム構築しているため、メーカーや機器を問わず保守をするマルチベンダー保守を前面に出した提案が主流だ。IT領域にとどまらずIT以外の領域の保守運用を請け負う動きも活発になっている。
各社はコンタクトセンターで保守の受け付けを行って障害切り分けをするとともに、最適な保守対応を行う体制を整えることを訴求する。
従来はシステムユーザー企業の保守が中心だったが、最近はITベンダーやSI企業との連携も進む。機器販売やシステム構築をする企業は、保守運用を専門ITサポートサービス各社に委託することで、品質の高い運用保守を提案できる利点もあるからだ。
最近ではセキュリティー対応も必要になっていることから、SOC(セキュリティー運用センター)を設置して対応するところも増えてきた。日立システムズや東芝ITサービスなどはSOCを活用したセキュリティー監視と運用を前面に出す。グループ各社の運用も拡大しており、培った知見をグループ外にも展開する。
IT機器以外の保守対応を請け負うケースも増えている。特に医療機器の保守ではOKIクロステックやNECフィールディングが全国規模で対応。医療機器はコンピューターから検査機器まで幅広く、保守には資格取得も必要となる。外資系の医療機器ベンダーなどは国内に保守網を持たないため、一括で保守を委託する案件も増えているという。
医療機器以外ではコンビニエンスストアなどの冷蔵機器や券売機、太陽光発電システム、電気自動車(EV)の充電設備、コミュニケーションロボットなど、さまざまな設備や機器の保守に取り組む動きがある。
この一年は情報システム部門などの課題を解決するアウトソーシングサービスへの取り組みも目立つ。DX化の支援や、導入したシステムやサービスの利活用を支援するサービスを用意するところもある。富士通コミュニケーションサービスは、社内での知見を生かしてデジタルの利活用をサポートする。日立システムズは、人手不足に対応したデジタル化支援の仕組みを展開する。
マルチベンダー保守を実現するためにサポート各社のDX化も進み、AIを活用した保守支援なども本格化している。幅広い保守運用を高い品質を維持しながら展開する工夫も進んでおり、今後も多様な保守サービスメニューが出てくるとみられる。
25年は人材不足がさらに顕在化する。ITサポートサービス各社への期待がさらに高まりそうだ。