2025.01.22 ハノーバーメッセ2025 産業変革と持続可能な未来を探る
最新のスマートファクトリー技術が一堂に会す(昨年のSAPブース)
欧州最大規模のインダストリアル関連の見本市「ハノーバーメッセ2025」が今年3月31日~4月4日に、ドイツ・ハノーバーで開催される。同展示会は1950年代から続く歴史ある産業見本市。従来は製造業を支える産業機器を中心に製造プロセスに関わる技術が展示されていた。近年は、AI(人工知能)やDX、IoT、ロボット、再生可能エネルギーなど、製造業を支える革新技術が数多く展示される見本市となった。最先端のスマートファクトリーを実現する上で必要となる多種多様な技術が紹介される見本市として、改めて注目されている。
同見本市を主催するドイツメッセは16日、ハノーバーメッセ2025の概要を発表した。今年のテーマは「Industrial Transformation―Energizing Sustainable Industry(産業変革―持続可能な産業の活性化)」。機械工学や電気工学、デジタル産業、エネルギー関連分野から約5000社の企業・団体が出展すると見込む。
時代とともに出展企業も変化
見本市の変化とともに、出展する企業の顔ぶれも変わりつつある。ボッシュやシュナイダーエレクトリック、シーメンスなどドイツを代表するグローバル企業に加え、グーグルやマイクロソフトなどのハイテク企業も数多く出展する。世界70以上の国や地域から優れた技術を持つ中小企業のほか、欧州最大の科学技術分野における応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構などの研究機関も出展。さまざまな技術分野から300超のスタートアップ企業も出展する。
ドイツメッセのバシリオス・トリアンタフィロスグローバルディレクターは「ハノーバーメッセは技術展示の場ではなく、『エコシステム』を構築する場であることが大きな特徴。産業界は今、サプライチェーン、エネルギー、デジタル化など大きなチャレンジに直面している。さまざまな課題を克服するためにもエコシステムを通じて、技術革新を進めていく必要がある。ハノーバーメッセは産業界のみならず、政治家や投資家も多く来場する。最先端の技術を知り、コラボレーションを加速してほしい」と話す。
今年のパートナーカントリーはカナダ
ハノーバーメッセでは毎年、「パートナーカントリー」を選定するのも大きな特徴の一つ。今年はカナダがパートナーカントリーに選ばれ、同国が誇る技術やイノベーションを紹介する。今回、カナダがパートナーカントリーに選ばれた背景には、カナダとドイツの強い経済的・政治的な結び付きがある。22年8月にカナダのトルドー首相が、ドイツのショルツ首相をカナダに招いた際に、パートナーカントリーになることを表明した。
量子コンピューター関連なども紹介
カナダは「The future’s here(未来はここにある)」をテーマとし、200社以上のカナダ企業がオートメーション、エネルギー、DX、グリーンテクノロジーなどの分野の技術を紹介する。注目されるのは、同国が世界でも先行する量子コンピュータ関連技術。今回も量子関連技術を有する企業が複数出展する予定だ。カナダにおける量子コンピュータ研究の中心地であるオンタリオ州やトロント大学のあるトロントなど各地域の紹介も行い、「イノベーティブエコシステム」の構築を提案する。
ネクストジェネレーションマニュファクチャリングカナダのジェイソン・メイヤーズCEOは「今回のハノーバーメッセではカナダが誇る先進製造技術を紹介する。最先端技術である量子技術を用いて製造分野で何ができるか、設計や素材の技術がどう製造業の革新に貢献できるかを示したい。そうした技術を紹介しながら、イノベーティブエコシステム構築につなげたい」と話す。
ハノーバーメッセでは「スマートマニュファクチャリング」や「産業用エネルギー」「デジタルエコシステムズ」などの展示エリアを設け、各分野に特化した技術紹介も行う。現在、生産現場の変革においては、AIが非常に重要な役割を果たす。AIを支えるエネルギーも重要な要素で、生産技術を支える全ての最新技術が一堂に会する見本市は世界でも数少ない。今年のハノーバーメッセは、未来のスマートファクトリーを実現する上でも非常に重要な見本市となるだろう。