2025.04.17 豊田自動織機と東北大発スタートアップ 耐熱材料開発 宇宙産業の基盤強化へ連携
豊田自動織機 経営役員 技術統括:一条 恒 氏(左)、ElevationSpace 代表取締役CEO:小林 稜平(右)
宇宙から地球への輸送サービスを開発する東北大学発スタートアップのElevationSpace (エレベーションスペース、仙台市青葉区)と豊田自動織機は16日、大気圏に再突入する際の高温環境に耐えられる材料を共同開発すると発表した。同社が持つ炭素繊維の3次元織物技術を生かし開発する耐熱材料で、国内宇宙産業の基盤強化と国際競争力の向上につなげたい考えだ。
両社が開発を狙うのは、宇宙空間の実証機が地球に帰還する際の大気圏再突入システムに用いる耐熱材料。その材料開発に生かすのが、3つの方向に繊維が配置された立体構造の3次元織物だ。
この織物は設計の自由度が高く、特定の部位に必要な強度や性能を持たせることができる。このため、過酷な環境で使う機体に用いる耐熱材料に適しているという。
具体的には、大気圏への突入時に機体の各部位にかかる熱負荷に応じて最適な密度で織ることで、軽量で損耗しにくい耐熱材料の開発に挑む。これにより、ロケットの打ち上げコスト全体の低減に貢献。耐熱材料コストを従来の2分の1まで下げることを目指す。研究開発は、28年頃までの約4年間を想定している。
現在実用化されている熱防護技術は、最大の熱負荷に合わせて部材を選び全体に装着する方法が一般的で、部位によっては過剰設計になるという課題が指摘されていたという。
エレベーションスペースは、無重力環境を生かす実験や実証を無人の小型衛星で行い、その成果を回収カプセルで地球に持ち帰る日本初の宇宙輸送サービス「ELS-R」の提供を目指している。開発する耐熱材料は、26年後半に打ち上げるELS-Rシリーズの初号機「あおば」の一部に使用する予定だ。
16日に開いた説明会で、エレベーションスペースの小林稜平CEOは「(開発する耐熱材料は)大気圏再突入システムにとって非常に重要な技術。あおばの打ち上げやその先の商用化に向けてチーム一丸となって開発に取り組んでいく」と意気込みを語った。
今回の共同開発は、3次元織物の適用先を探していた豊田自動織機の提案をきっかけに実現したという。同社要素開発部の岩田来氏は「顧客のニーズを先取りして商品サービスを継続的に提供し、世界の産業社会基盤を支えたい」と意欲を示した。