2025.07.11 【電子部品技術総合特集】電子部品メーカーに技術関連アンケート 電波新聞社まとめ

 電子部品メーカー各社は、今年度も積極的な研究開発活動を推進する。電波新聞がこのほど実施した、主要電子部品メーカー対象の「技術関連アンケート」(回答30社)によると、2025年度の研究開発費は多くの企業が前期比増額を計画。新製品開発の重点分野は、自動車関連を筆頭に、FA・制御関連、データセンター関連、新エネルギー関連などの分野が重視されている。工場のスマート化や、業務へのAI(人工知能)活用なども進展している。また、米国トランプ政権による追加関税や貿易規制の影響については、多くの企業が間接的なマイナス影響を懸念していることなどが示された。

29社中14社が「増」回答 「2桁以上の増」6社

2025年度の研究開発費計画

 2025年度の電子部品メーカー各社の研究開発費計画は、多くの企業が積極的な計画を打ち出している。回答29社中、約半数の14社が「増」と回答し、うち6社は「2桁以上の増」と回答した。最も多かったのは「横ばい」の15社だが、米トランプ関税の影響など社会全体の不確実性が増す中でも、「減」とした企業は見られなかった(グラフは5面参照)。

自動車関連、FA・制御関連…

分野別の新製品重点開発分野

 25年度における新製品開発の重点分野(複数回答)を聞いた。最も多かったのは昨年同様に「自動車関連」で23社。次いで「FA・制御関連」が15社。3番目は「データセンター関連」と「新エネルギー関連」の13社となった。以下、「医療機器/ヘルスケア」「ロボット」と続く。

 電子化/電動化が進む自動車は、多くの部品メーカーが最重点分野の一つに位置付けている。

 FA・制御関連は、24年度は市場での在庫調整長期化で厳しい状況が続いたが、世界的な自動化ニーズの高まりを背景に、中長期で高い成長が期待されている。

 データセンター関連は、生成AI(人工知能)の広がりが、需要増と技術革新を促進していくことが見込まれる。

 新エネルギー関連は、脱炭素要求の強まりにより、一段と重要性が増している。

 このほか、通信インフラ、ウエアラブル機器、スマートフォン、半導体製造装置、航空宇宙関連など幅広い分野が重点開発分野に挙げられている。

「生産技術開発」が最多の16社

海外での設計 ・開発機能

 海外での設計、開発機能についての質問(複数回答)では、回答26社で最も多かったのは「生産技術開発」の16社。次いで「新製品開発」「機種変更のための設計」が11社で並んだ。

 市場のグローバル化への対応や外資系有力顧客への技術サポートなどのため、海外での技術体制構築は重要性を増している。特に近年は、海外での労働者不足や人件費高騰に対処するため、海外製造拠点の自動化・スマートファクトリー化が追求されており、現地の生産技術力向上が図られている。現地で新製品設計から量産、販売までの一貫体制を構築することで競争力を高めている部品メーカーも多い。

アライアンス「あり」が3分の2

M&A/アライアンス/産学共同

 研究開発に関するM&A(企業の合併・買収)やアライアンス、産学共同への取り組みを聞いた。

 「研究・開発関連のアライアンス」では、回答29社中、「あり」と回答した企業が計19社と約3分の2を占め、うち13社は「国内・海外のいずれの企業ともアライアンスがある」と回答した。「産学共同の研究・開発」では、回答29社中、「行っている」が計25社で全体の約86%を占めた。うち9社は「積極的に行っている」と回答した。

 「研究・開発におけるM&Aの取り組み」(複数回答)では、回答28社で、「国内企業の買収実績がある」が13社、「海外企業の買収実績がある」が1社、「実績はないが良い案件があれば検討する」と答えた企業が6社だった。

25年度計画「10%未満」が最多

新製品売上比率

 売上高に占める新製品比率の実績・計画を聞いた。

 24年度実績は、回答24社中、最も多かったのは「10%未満」の14社。一方、「20%以上」と回答した企業も計8社に達し、うち3社は「30%台」と回答した。25年度計画では、回答22社中、最も多かったのは「10%未満」の8社だが、「30%台」とした企業も6社に達した。

 新製品の定義は企業によって異なるが、中期での新製品売上比率向上が志向されている。

間接/直接的にマイナス影響

米国の追加関税や貿易規制の影響について

 米国トランプ政権による追加関税政策や貿易規制の影響について聞いた。

 これらが自社の事業に与える影響の有無については、回答30社中、「大きな影響を受ける」と「ある程度影響を受ける」の合計が15社で、全体の半数を占めた。最も多かったのは「ある程度影響を受ける」と答えた10社で、次いで多かったのは「影響を受けるが限定的」の9社だった。

 「影響を受ける」と回答した企業への「具体的にどのような影響が出ると考えているか」の質問(複数回答)では、最も多かったのは「グローバルでの完成品や完成車需要が低下することによる間接的なマイナス影響」の20社。自社製品の米国向け輸出に関する「直接的なマイナス影響」を挙げたのは17社だった。このほか、サプライチェーンの混乱によるコスト増、部材調達への影響などが懸念されている。

 「米追加関税や貿易規制への対応策」(複数回答)では、回答28社で最も多かったのは「情報収集体制の強化」の16社。「生産体制の見直しを行う」とした企業も14社に。一方、「米国での生産体制構築や生産能力の増強」を行うと答えた企業は2社にとどまった。

 「今後、グローバルで生産比率を高めるエリア」(複数回答)ついては、回答21社で、東南アジアが15社で最も多く、2番目は日本の7社。3番目はインドの4社だった。

全体の57%が「活用を始めている」

自社業務へのAI活用

 自社業務へのAI活用状況については、回答30社の中、「活用を始めている」と答えたのは17社で、全体の57%に達した。「活用準備を進めている」と答えた企業も7社を数えた。

 「活用を始めている」という企業への「具体的にどのような業務に活用しているか」の質問(複数回答)では、回答18社で最も多かったのは「工場の生産性向上や品質向上」。「開発業務の効率化」を挙げた企業も9社に達した。

アンケート回答企業一覧

 ▽旭工芸▽アルプスアルパイン▽イリソ電子工業▽SMK▽NKKスイッチズ▽オータックス▽岡本無線電機▽岡谷電機産業▽京セラ▽小峰無線電機▽サガミエレク▽サンケン電気▽指月電機製作所▽住友電気工業▽セイコーインスツル▽大真空▽大陽ステンレススプリング▽トーキン▽トレックス・セミコンダクター▽ニチコン▽日清紡マイクロデバイス▽日本ケミコン▽日本航空電子工業▽日本シイエムケイ▽日本電波工業▽ヒロセ電機▽北陸電気工業▽ホシデン▽ミネベアミツミ▽メイコー。(30社・五十音順)