2025.07.11 【電子部品技術総合特集】京セラ 仲川彰一執行役員研究開発本部長
仲川 本部長
研究開発費、過去最大
情報通信・モビリティーなど社会課題を解決へ
京セラは、経営理念の「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。」を実現するためにコーポレートの研究開発を進めている。この考え方に基づき、社会課題解決の4重点分野と位置付ける「情報通信」「モビリティ」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」を組み合わせ、さまざまな領域で研究を進める。
同社は今年度の研究開発費を1200億円に設定。この数字は昨年度とほぼ同規模となる。仲川彰一執行役員研究開発本部長は「社会課題を解決する事業領域を組み合わせ研究開発にチャレンジしている。注目するポイントは絞れており、今年度はより集中して事業を進める」と話す。
情報通信では光通信関連を中心に次世代通信やデーターセンター向け、モビリティーではADASや交通インフラシステムの研究を進める。光通信は水中での高速通信、交通インフラシステムは神奈川県で760メガヘルツ帯のシステムを活用し動き始めている。
環境・エネルギーは蓄電池、燃料電池、次世代太陽光パネル、エネルギー・マネジメント・システムを推進。医療・ヘルスケアはバイオ材料やAI(人工知能)技術を活用した診断などに取り組む。
同社は次世代通信を進めるみなとみらいリサーチセンター(横浜市西区)、材料開発を推進するきりしまR&Dセンター(鹿児島県霧島市)、デバイス開発を推進するけいはんなリサーチセンター(京都府精華町)の3カ所で研究開発を進めている。2月には建設を進めていた生産技術を研究する野洲開発センター(滋賀県野洲市)が竣工(しゅんこう)。現在、一部で稼働している。
海外の研究機関はそれぞれのエリアに特化した研究開発を進めている。現在、海外の研究機関をつなぐVR組織も本格稼働している。
同社は昨年4月にコーポレート・ベンチャー・キャピタルファンドを組成。新市場、新技術領域でスタートアップと連携する。「組成から1年が経過し、慣れてきた。今後本格展開に向けて取り組む」(仲川本部長)。
また、大学との連携も強めている。東京大学とは連携で成果が出ている状況。九州大学との連携は本格稼働している。マサチューセッツ工科大学との産学連携では人材交流が進んでいる。地元の京都では8企業、9大学で作る「京都クオリアフォーラム」に参画。先日、京都で開催されたIVSKYOTOに登場している。ほか、各研究開発拠点でもオープンイノベーション活動を行っている。