2025.07.31 【家電流通総合特集】 〝くらしまるごと戦略〟の総仕上げ ヤマダホールディングス代表取締役会長兼CEO 山田昇
山田 代表取締役会長兼CEO
ライフセレクト 大型商業施設と連携など成果
2030年度に売上高2兆2000億円、経常利益1000億円、経常利益率4.5%を目指す中期経営計画をスタートした。これまで、家電やリフォームを中心としたデンキ、新築などの住建、住宅ローンなどの金融、リユースなどの環境の各セグメントの事業を有機的に連携させ私たちの生活全体をより良くする「くらしまるごと」戦略を掲げてきたが、新中計は総仕上げと位置付けて取り組んでいく。
少子高齢化が進むとともにインターネット社会になり、家電市場を取り巻く環境は大きく変化した。ネットで商品や価格などさまざまな情報が得られるようになった今は、従来とは商売の仕方が変わっており、店舗の魅力をどのように出していくのか、来店してもらうためにどうしていくのかが非常に重要になってきている。そこで当社は家電を起点にして、生活に関わる商品をまるごと取りそろえた提案にいち早く取り組んできた。
「くらしまるごと」戦略の概念は、12年に立ち上げて以降、中長期的な視点で各事業領域を補強してきた。その一つの答えとなるのが、21年に出店を始めた新コンセプトの「LIFE SELECT(ライフセレクト)」になる。ライフセレクトは、家電から家具・インテリア、おもちゃ、リフォーム、住宅に至るまで生活に関わる全てがそろう店舗だ。
大型店出店が軌道
売り場面積が3000~4000坪クラスの大型店舗で、これまで培ってきた知見が入った店舗になる。大型店舗のため、前中計期間中は出店スピードが計画よりも遅れていたが、この一年で出店も軌道に乗り始めた。
昨年からはホームセンターや大型商業施設との連携も本格化。24年にオープンしたテックライフセレクト湘南平塚店は、ホームセンターのスーパービバホームとスーパーのエイビイが入るショッピング施設と連携して出店した。
24年11月末にオープンしたテックライフセレクト高岡店は、大型商業施設のイオンモールと隣接して出店した。今年も大型商業施設と連携した出店に取り組んでいる。ライフセレクトでは39店舗目となるテックライフセレクト足立竹の塚店は、1階にイオンの新コンセプトの総合スーパー「イオンスタイル」が入った。
大型商業施設との連携は「衣食住」の提案をする上で、とても魅力ある取り組みだ。その意味では他社からの引き合いも増えている。大型商業施設との連携や、竹の塚のようにライフセレクト内にスーパーが入るといった、さまざまな協業が今後も生まれてくるとみている。
8月には長野県須坂市にホームセンターのムサシと協業して総合生活提案型ショッピングスクエアをオープンする。地域活性化に向けた街づくりにもつながる取り組みだと感じている。来年には北九州の小倉でトライアルカンパニーと協業して大型商業施設に展開する計画だ。ライフセレクトの出店が順調に進み始めており、年間10店程度の出店ができる見通しだ。この先も既存店のスクラップ&ビルドも含め店舗の効率化と各地域でのシェア拡大を狙いたい。
リフォーム提案効果
ライフセレクトの拡大と合わせ、家電、家具、リフォームが一体となった提案が効果を上げてきている。家具もグループ化した大塚家具との商品づくりが成果を上げつつあり、お客さまから「ヤマダデンキには良い家具が購入しやすい価格でそろっている」と評価を受けるまでになった。
住宅関連もようやく構造改革が終わった。世帯構成などが変わる中で住宅の購入に対するニーズも変化してきている。
当社ならではのスマートハウスの提案をはじめ、ターゲットに合わせた企画商品を用意していきたいと考えている。ライフセレクト店内に「住まいの相談カウンター」の設置店舗を増やしていき、住宅販売や買い取りなど、不動産関連サービスを一貫して提供していく。
SPA/PB商品の開発に力
自社オリジナルブランド(SPA)商品とプライベートブランド(PB)商品の開発にも力を入れる。家電市場をみると、国内メーカーの商品だけでなく、中国をはじめ海外メーカーの家電も発売されている。さらに家電以外の流通企業からもオリジナルブランドの家電が発売されるようになった。当社はメーカーの商品ではカバーできない、お客さまの要望に応えられる商品をそろえている。
SPAではエアコンなどに加え、今年は洗濯機の「RORO(ロロ)」シリーズに斜めドラム式洗濯乾燥機を加えた。お客さまの声を聞き入れて商品化したもので税込み10万9780円を実現した。縦型洗濯機と大手メーカーのドラム洗の間に位置付け、着実に単価アップできる商品ラインとして提案していく。
併せて、PB商品も強化する。家電メーカーと連携し当社オリジナルとして展開するものだ。OEM(相手先ブランドによる生産)商品の展開も加速し、テレビではJVCケンウッドと連携し、JVCブランドのテレビを発売した。
SPAとPBは23年度に売り上げ740億円規模、売上構成比5.8%だったが、30年度に売り上げ3000億円、売上構成比15.0%まで高めていく。現在専門部隊で企画開発に取り組んでいる。海外メーカーなどとの連携をさらに図りながら商品を拡充する。
リユースも拡大
リユース事業も拡大してきた。自社で家電リサイクル工場を持ち資源循環システムを構築していることも強みで、一部店舗ではリユース家電も販売し、幅広い需要に応えている。今年は山口工場を稼働させたほか、さらに新工場も建設中だ。今後もさらに拡充させたい。
市場環境が大きく変化している中ではネットとリアル店舗の融合を進めるだけでなくデジタルを活用したマーケティングも重要になる。当社の販売チャネル網を組み合わせた展開を強化したい。約6000万件の会員データを活用したマーケティングを進めるとともに、アプリ会員の拡大をしていく。
25年度の国内家電市場はほぼ横ばいで推移するとみている。既存店で確実に需要を取り込むほか、ライフセレクトを中心とした新規出店でプラスにもっていく考えだ。