2025.08.20 【AI時代の検索㊤】  進む脱キーワード検索 企業に迫る「選ばれるコンテンツ」の強化

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 「ググる」に代表されるインターネット検索が変革期を迎えている。生成AI(人工知能)の進化と普及に伴い、知りたい情報を調べる方法の選択肢が広がり、「AIとの問答」が日常生活に急速に浸透してきた。こうした波は企業にも押し寄せており、ビジネスの構造を根本から見直す動きが一気に広がりそうだ。
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 5月20日。検索の王者で知られる米グーグルが、AIがユーザーの質問や意図を読み取り回答を返す「AIモード」を検索サービスの中心に据える方針を表明し、世界的に話題をさらった。すでに米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」に象徴される対話型AIが広がる中、AI主導で検索行動を高度化する流れを決定づけた格好だ。

若年層中心に変化

 AIは、日本の生活者の検索スタイルも変えつつある。博報堂メディア環境研究所が1~2月に実施した「検索サービス利用実態意識調査」の結果によると、検索方法の多様化が進展し、AI検索の利用率が26.7%に到達。10~20代に絞ると約5割に達し、若年層を中心にAI検索の活用が進む傾向が浮かび上がった。

 こうした動きは、多様なステークホルダー(利害関係者)を対象にウェブサイトを運営する企業に、自社のサイトや情報がAIに選ばれるよう最適化する「AIO(AI最適化)対策」を迫っている。多くの企業はこれまで、検索エンジンで見つかりやすいよう「SEO(検索エンジン最適化)対策」に力を入れてきたが、それだけで顧客の関心をつなぎとめることが難しくなっている。

 AIは単にキーワードが一致するかどうかではなく、文章の意味を理解した上で答える。このため企業には、AIに認識されるようコンテンツの見せ方を工夫する対応が求められる。

サービスが続々登場

 そこで威力を発揮するのがAIO対策で、今年に入って対策を支援するサービスが続々と登場している。1社が、AIサービスを提供するエーアイ・ラボコレクト(長野市)だ。

 同社の田中浩一社長は、グーグルの「Gemini(ジェミニ)」やマイクロソフトの「Copilot(コパイロット)」といった米国発のAIアシスタントに触れ、「SEOと同じように集客や誘客が可能だ」と評価。多彩なAIの特性を踏まえてAIO対策を後押しすることに意欲を示した。

 同社が手がけるAIOサービスの流れはこうだ。まず支援先のウェブサイトがAIにどのように見られているかを診断。次に、独自のAI解析ツールで構造・内容や信頼性を評価する。さらに「情報の構成」を設計し、AIに選択されるようにする。

 「AIから返ってくる内容に顧客の名前を出すにはどうしたらいいか」。田中社長がAIOサービスを展開する際に重視するポイントだ。導入企業には、SEO対策を強化した上で、AIにも定期的に働きかけるよう推奨する。

意識改革が課題に

 一方、AIOサービスの普及に向けた課題も少なくない。AIアシスタントの種類が増えると、サービス導入企業に求めるAIO対策も高度化に向かう。ただ、対策を強化したい企業がそうした変化に対応することは至難の業で、社員間に意識の差が生じるリスクもある。

 田中社長は「AIO対策を進めづらい環境になってしまう可能性がある」と指摘。その上で「対策の普及には時間はかかるが、事業の実績を発信したり、サービスの認知度を高めたりしたい」と意気込みを語った。
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 AIの目に留まる確率を高めるAIO対策は、企業の競争力を左右する戦略として重要視されるようになっている。3回の連載を通じ、AIの登場で大転換期を迎えた検索の最新動向を浮き彫りにする。