2025.09.15 ローマ市が観光支援の「AIアシスタント」導入 NTTデータなどが開発
撮影に応じるローマのロベルト・グアルティエーリ市長(右)とNTTデータイタリアの岡本健志氏=東京都港区の在日イタリア大使館
イタリアの首都ローマの魅力を味わいたい観光客らの移動や滞在を後押し――。NTTデータと在日イタリア大使館(東京都港区)は、そんな機能を備えるAI(人工知能)バーチャルアシスタント「Julia(ジュリア)」を公開した。市公認のデータなどを用いて快適な周遊を支援するサービスで、観光プランの企画段階からサポートしてくれる。今後はアプリ化する計画で、公共サービスとして進化させることを視野に入れている。
ジュリアは、ローマ市がNTTデータやマイクロソフトと共同で開発したサービスで、3月に提供を開始。欧州の都市で初めて導入された。既存のチャットツールやウェブサービスを通じて利用できるツールで、日本語を含めて80以上の言語に対応した。
具体的には、市の公認データや検証済みデータを使用し、リアルタイムで信頼性の高い情報を市民や観光客に無料で提供することが特徴だ。こうした仕組みを実現するため、米オープンAIの高性能な大規模言語モデル(LLM)「GPT-4.1」を活用し、統括するエージェントと3種類の専門エージェントで構成されるシステムを構築。ユーザーニーズを匿名化したデータとして記憶し、パーソナライズ(個別)化した形で応答するメモリー機能も取り入れた。
12日に同大使館で開かれた説明会では、ジュリアのデモンストレーションを披露した。例えば、「観光や移動に便利なローマ中心部の滞在エリアはどこですか」と質問すると、複数の推奨エリアをリストアップし、各エリアの特徴やメリットなどを表示。移動手段を問うと、最適な行き方を提案してくれた。さらに、医療情報をチェックできることも売り。けがに見舞われたことを想定し、「どこの病院に行けば良いですか」と尋ねると、近くの病院の住所や救急外来の状況などを教えてくれた。
「LINE」でも利用可能に
NTTデータイタリアのグローバルビジネスイネーブルメント責任者でシニアディレクターを務める岡本健志氏は、今後のジュリアの展開について、「アプリにすることで、より高機能化を実現したい」と述べた。旅行中に必要な通知を受け取れるようにしたい考えだ。さらに日本ユーザーが使いやすいよう、対話アプリ「LINE(ライン)」で利用できる環境の実現も目指しているという。
ローマのロベルト・グアルティエーリ市長は、市内にあふれた歴史的な建造物や芸術作品などの魅力を紹介しながら、「(ローマ観光の)リピーターにも楽しんでほしい。市民も知らないような新しいルートを経験してほしい」と強調。加えて、1年以内にジュリアをアプリ化する計画も明かした。保育園への登録など、さまざまな事務手続きをサポートできる行政サービスへ進化させることにも意欲を示した。