2025.11.14 「声優・俳優の声」を守る 公式音声データベース始動へ 日俳連と伊藤忠商事が連携

将来のAI音声活用による権利保護とビジネス展開のイメージ

 日本俳優連合(日俳連)と、総合商社の伊藤忠商事、同社グループの伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の3者は14日、声優・俳優といった「声」を職業とする実演家の音声を安心・安全に保管・利活用し、国内外へ提供するための新たな取組みとして、公式音声データベース「J-VOX-PRO(仮称)」を立ち上げることで合意し、覚書を締結した。

 生成AI(人工知能)の急速な普及に伴い、実演家の声を模倣し、無許可で音声コンテンツが生成・流通される事案が増加しており、人格的・経済的権利の保護の観点から課題が指摘されている。一方で、音声や音声認識市場が2032年までに約13兆円規模に成長すると予測されている。

従来の状況

 こうした中、日俳連は2023年から該当課題に取り組み、24年には「NOMORE無断生成AI」活動に参画するなど、実演家の声を知的財産として守り、適正な対価と利用管理の仕組みづくりを進めてきた。

 J-VOX-PROは、主に法人を対象とし、実演家から意思表示を受けた高品質な日本語音声データを、電子透かし・声紋認識といったセキュリティー技術を適用した環境で保管・管理する。数千人規模での収集を想定し、契約条件や料金設定も実演家やプロダクションとの協議を経て透明性を担保する形で進める。

 今回のプロジェクトでは、日俳連が実演家の声の保護・利活用を主導。伊藤忠商事が正規利用による新規事業創出・海外展開を支援、CTCがデータベースの運用環境・技術提供を行い、政府・行政機関とも連携し、持続可能な運営体制を構築するのが狙い。利用契約のトレーサビリティーと、不正利用発見時の対応体制も強化する。

 教育・医療・観光など多様なサービス分野での活用を視野に入れ、利用希望企業や団体向けに音声ライセンス供与や実演家とのマッチング機能を備える。