2026.10.19 トレンドマイクロ、AI悪用のサイバー攻撃に警鐘 100億円規模の緊急支援策

AI時代に対応した防御体制について説明するトレンドマイクロのエバ・チェン社長兼CEO=19日、東京都新宿区

 人工知能(AI)を悪用したサイバー攻撃の脅威が急速に高まる中、セキュリティー大手のトレンドマイクロは19日、最大100億円に相当する緊急支援策を発表した。AI時代に対応した防御体制への移行を後押しする。エバ・チェン社長兼CEOは、企業や個人が警戒心を持ってAI攻撃に備えるよう警鐘を鳴らした。

 同社によると、1~9月に国内で確認されたサイバー攻撃は607件に達し、25年通年の594件を上回った。さらに国内企業から多くの個人情報が流出し、日本全体がサイバーリスクに直面している。

 東京都内で同日に開いた記者会見で、チェン氏はこうしたリスクに個人を含む官民が協力して対処する必要性を説き、「みんなが協力しなければサイバーセキュリティーに押し寄せる嵐に対応することは不可能だ」と訴えた。

 さらに同社は、日本向けサイバーレジリエンス支援策も表明。重要インフラ事業者や大企業に加えて、サプライチェーン(供給網)を支える中小企業を優先的に支援する方針を示した。

 大企業などを対象にセキュリティー環境の高度化を支援するため、最大100億円規模の「TrendAI Flex」ライセンスクレジットを提供する。さらに、顧客の現場に深く入り込みセキュリティー対策の強化に向けて伴走支援する専門人材「フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)」の派遣も準備している。FDEは顧客と連携してサイバーリスクを特定し評価した上で、リスク低減に向けた対策の優先順位を決め、必要な対策を迅速に導入していく。

 中小企業向けには、サイバー攻撃対策サービス「ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス」の60日間無料体験版を提供するほか、AIを用いた詐欺対策の準備も進める。個人向けには、スマートフォン向け詐欺対策アプリ「詐欺バスター」を90日間無償提供する。

 会見でチェン氏は、「AIが攻撃者のスキルを高めている。その結果、多くのIDが盗まれ、さまざまな攻撃が仕掛けられている」と指摘し、AI時代に対応した防御体制への移行を呼び掛けた。

 例えば、偽サイトに誘導してIDやパスワードなどの重要情報を盗み取る「フィッシング詐欺」が、AIの活用によって容易になっていると説明した。盗まれた情報を他の詐欺集団に販売するほか、その情報を悪用して企業のシステムに侵入し、身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」による攻撃につなげる恐れもあるとして、一連の攻撃への警戒を促した。

 国内企業を狙ったサイバー攻撃が多発している背景については、金銭目的で活動する攻撃グループの存在を挙げ、「日本の製造業を標的にしている推定される」との見方を示した。同社はこうした状況を踏まえ、供給網を支える中小企業への支援も強化していく考えだ。