2020.07.20 新型コロナ感染、最小限に抑えた台湾 経済部工業局・呂正華局長に聞く

台湾経済部工業局 局長 兼任 台日産業連携推進オフィス 主任 呂正華

 台湾政府は近年、AI(人工知能)、IoT、第5世代高速通信規格5Gを積極的に推進している。

 新型コロナウイルスのパンデミックに伴い、AI技術を応用した防疫ソリューションやニューノーマルに対応したサービスの需要が一層拡大。

 政府主導で新型コロナウイルスの感染拡大を最小限にとどめた台湾の取り組みを、台湾経済部工業局の呂正華局長に聞いた。

 この春、世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、各国でマスクが不足する事態が起こった。台湾政府はこの事態に迅速に対応。

 中小企業29社を率いて、40日で台湾製マスクの日産量を188万枚から約10倍の1800万枚以上へと増やした。5月末の日産能力は2千万枚に達し、6月1日にマスクの輸出が解禁された。

 呂局長は「人(Man)、設備(Machine)、材料(Material)、方法(Method)が成功のポイント。この四つのMは『台湾製マスク』をはじめ、台湾の産業がコロナ禍においても活躍するカギとなった」と語る。

 マスク生産の成功は、台湾のモノづくりの実力や品質をあらためてアピールすることになり、台湾への投資回帰につながっている。

 台湾政府が実施する台湾域内への投資に対して優遇を与える「投資台湾三大方案」は、5月時点で1兆台湾ドル(約3.6兆円)を突破。大企業の国内回帰にけん引される形で中小企業の回帰も進む。

 感染症予防の観点からICT産業に対する需要も一段と高まった。亞迪電子(ADE TECHNOLOGY)が製造するサーモグラフィや司圖科技(PATIAL-TOPOLOGY)の自宅隔離測位システム、愛微科(IWEECARE)の遠隔体温検知ソリューションなどが新型コロナウイルス感染対策製品として注目を集める。

 圓展(AVer Infomation)のテレビ会議システムや、訊連(CyberLink)のビジネスコミュニケーションサービスは、テレワーク需要を背景に業績が好調に推移。

 スタートアップ企業の佐臻(Jorjin Technologies)は日本のエプソンと、サーマルイメージの応用デバイスとしてスマートグラスを共同開発した。

 「台湾は早い段階からAI、5Gを推進しており、工業局は実践経験を持つAI人材を育てることを責務として活動してきた」と話す呂局長。

 その言葉通り、工業局では「AI HUB」というプロジェクトを立ち上げ、企業が必要とする様々なソリューションを提供している。ICT技術と政府のオープンデータを活用して「地方創生」に取り組む動きも加速する。

 蔡英文総統の再任に伴い、台湾はハイエンド製造センター、最先端半導体製造センターとハイテク研究開発センターの建設に着手する計画。日本企業の台湾での研究開発拠点の設置とさらなる投資を呼び込んでいく。

 呂局長は産業分野での日本と台湾の連携を後押しする「台日産業連携推進オフィス」(TJPO)の主任を兼任している。

 「これまで日本と台湾は半導体、ICTなどのサプライチェーンにおいて両者の利点を組み合わせ、補完的な協力関係を構築してきた。

 5G、AIの応用分野でも日台連携の基礎を生かし、緊密な連携を促進していけば、台湾と日本の企業にとってウィンウィンの関係を創造できる」と呂局長は意気込みを語った。(台北支局)