2020.07.21 【家電総合特集】エアコン 室内換気や衛生面をアピール、夏商戦の盛り上げ図る
換気や清潔性など新型コロナを意識した訴求が重視される
エアコン商戦の本番である7月は、昨年に引き続き今年も梅雨の影響を大きく受け、気温も上がりきっていない状況だ。九州を中心に大雨による災害も発生しており、6月まで勢いがついていたエアコン販売も足踏み状態になっている。
今夏は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、夏休み本番となる8月も自宅で過ごす人が多くなると予想されている。そのため、自宅で快適に過ごすための空調需要が高まると見られていた。もともと猛暑予想でもあったため、その期待感が業界では高まっていた。
緊急事態宣言が解除された6月からエアコンを含む大型製品の動きが活発化したことで、それまでの期待が現実になったかと思われた矢先、梅雨のインパクトが想定以上に響いている。
昨年は10月に消費税増税が控えていたことで、梅雨で販売が落ち込んだ7月分を、8月の猛暑と増税直前の駆け込み需要でカバーする格好となった。今年は逆に需要を喚起する要素が見当たらないため、暑さが本格化しなければ停滞感が長引くことも想定される。
市場環境は楽観視できない状況ではあるが、メーカー各社は「ウィズコロナ」に合わせてエアコンの訴求ポイントを変えるなどで販売につなげようとしている。コロナ禍で、室内の換気や衛生面に対するニーズが急速に高まっており、それらに貢献するエアコンの機能をアピールすることで、夏商戦を盛り上げようとしている。
例えば、三菱電機は最上位機「FZシリーズ」などに搭載する「ピュアミスト」機能の訴求に重点を置き始めた。電気を帯びたミストが菌やウイルス、カビ菌、花粉を抑制して脱臭する機能で、同社はこれまでピュアミストは前面訴求してこなかった。
シャープの「プラズマクラスター」やパナソニックの「ナノイー」などに比べると認知度も決して高くない上、製品の勝負どころは、快適性など独自性を打ち出せる部分で訴求していたからだ。ただ、新型コロナがその状況を一変させており、今後はピュアミストの訴求を重視していく考え。
三菱のような対応は、エアコンに限らず今後、様々な製品・分野で必要になってくるはずだ。特にエアコンではIoT化も進んでいるため、ウィズコロナを意識した機能のアップデートなども検討されていくだろう。
日本冷凍空調工業会(JRAIA)の予測では、20年度のエアコン出荷台数は914万4000台。17年度以降、毎年900万台を超える高水準で市場は推移しており、寒冷地への出荷増などで900万台が基礎需要になりつつある。
コロナが夏商戦にどういう影響を与えるかはこれから判断することになるが、下期においては従来通りの暖房訴求に加えて、コロナを意識した清潔、換気などを組み合わせた提案も重視した方がよさそうだ。