2020.07.21 【家電総合特集】三菱電機松本匡専務執行役リビング・デジタルメディア事業本部長

産業構造など4つの変化対応

 売上げの約8割を空調・冷熱事業が占める家庭電器セグメントでは、新型コロナウイルスのインパクトは小さくなく、20年度の業績見通しを売上げで1100億円、営業利益で420億円下方修正するほどだった。4-9月はコロナの影響が続くと見ている。

 国内は4-5月が最も厳しく、緊急事態宣言が明けてからは、それまでの自粛の反動もあって家電は大型製品の販売が活発になった。特別定額給付金交付の効果もあったと見ている。エアコンや冷蔵庫が好調で、6月の旺盛な需要で盛り返した格好だ。

 一方、設備関連はまだら模様だ。飲食関連は店舗のリニューアルなどが延期になったりしている半面、スーパーは多忙になってしまい、すぐに工事に着手できない状況になっている。マイナスとプラスの影響が設備関連では表面化しており、家電よりも市場の回復が遅い印象だ。

 こうした市場環境が続く中、新型コロナで四つの変化が起きていると考えている。

 一つは、「産業構造の変化」だ。製造業で設備投資が停滞するなど、設備関連で投資バランスに変化が起きている。

 二つ目は「暮らしの変化」だ。これは三つ目の「働き方の変化」とセットになっているとも言える。

 今年は東京オリンピックが開催される予定であったため、当社はもともと「ワーク・ライフ・バランス」を考え、在宅勤務の体制を整えるようにしていた。それがコロナで一気に進んだ格好だ。

 在宅勤務中は業務に集中できるかというとそうでもなく、家事の負担もあり、換気や手洗いといった衛生面のニーズも出てきた。こうした変化にも対応していく必要がある。

 四つ目はお客さまとのコミュニケーションやマーケティングの変化だ。VR(仮想現実)で伝えるなどコミュニケーションの在り方が変わってきた。

 これら四つの変化は、短期的にはリスクかもしれないが、中期的にはチャンスになると思っている。家電でも、冷蔵庫で冷凍食品を大量に保存できることや、菌やウイルスなどを抑制するルームエアコンの「ピュアミスト」機能などに訴求を変えていく。エコキュートの新製品にも、配管を通るお湯に紫外線を当てて清潔さを保つ「キラリユキープ」を搭載し、清潔性をアピールする。

 オフィスの在り方も変わる。出社するからには皆でクリエイティブな議論をする場にしていくことになるだろう。そこではより快適な環境が重視され、空調、照明、換気を組み合わせたトータル提案力が生きてくる。AI(人工知能)やIoTの浸透も踏まえ、設備や空調などをIoTでつなげるためのグローバル・プラットフォームの開発も進めており、今年中には基盤が出来上がる予定だ。

 新型コロナで今後の予想は立てにくいが、マイナスとプラスの影響があるだろう。新しいマーケットや政府の施策などにもしっかり対応し、回復基調に乗せていきたい。