2020.08.31 【ソリューションプロバイダ特集】ニューノーマルに対応し課題解決
出社時もソーシャルディスタンスを保てる新しいオフィス空間の提案も始まる(写真は内田洋行)
ソリューションプロバイダ各社は、新型コロナウイルスの感染拡大により一変した市場環境に対応したサービス展開を加速させる。20年はクラウドやAI(人工知能)、IoTなどのデジタル技術で価値を生み出すデジタルトランスフォーメーション(DX)を軸にしたサービスの拡大を目指してきた。このほど、電波新聞社が実施したソリューションプロバイダ各社のトップインタビューでは「20年後半はニューノーマル(新しい日常)に対応したサービスで課題を解決していく」という声が多く上がった。後半戦はコロナ禍に対応したサービスが鍵になりそうだ。
ここ数年、各社はDXをキーワードにしたサービス展開に注力してきた。特に昨年からは働き方改革を前面に出した取り組みが本格化。在宅勤務やテレワークを推進するための支援サービスを重点施策に取り上げる企業が多かった。
一方で人材不足や現在多くの企業が使っている情報システムが25年ごろに運用や更新が難しくなる「2025年の崖」問題なども浮き彫りになっており、DXの推進を命題にする動きも活発になってきていた。
そうした中でのコロナ問題はICT関連業界にとって、あらためて現状を見つめ直すきっかけになっている。 主要各社トップの見解は様々だ。今回のコロナを前向きに捉えて取り組む姿勢を示すところ、慎重に動静を見守るところ、逆に厳しい見方をするところと、意見が分かれた。
ただ、全体的には新型コロナの襲来がDXと働き方改革を一層加速させるという見方は一致しており、自社のコロナ対応とコロナ対応ソリューションの展開の両面で取り組むところが多そうだ。
ある首脳は「コロナにより今後5年で起こりうる事象が1年で訪れている」という。その意味で各社は、今後5年を見据えて働き方改革の支援やDXに取り組んできた。
実際に社内のDX化など取り組んできた企業は、コロナ禍での柔軟な対応につながったところも多い。今後は、いかに速やかにコロナに対応しDXをキーワードにしたサービスを強化するかが課題になる。
アフターコロナなどキーワードに各社、ソリューション展開
主要各社もコロナ禍のサービス展開に取り組み始めている。「アフターコロナ」「ウィズコロナ」「ニューノーマル」などをキーワードに、ソリューション展開を進める動きが目立つ。
リコージャパンは、リモート機能や自動化などニューノーマルに焦点を当てたソリューション群を発売したほか、NECフィールディングや日立システムズ、日立ソリューションズは、ニューノーマルに対応したサービスメニューを拡充していく構えでいる。
働き方改革の加速は各社が重点施策に掲げる領域だ。いち早く働き方の見直しを取り組み「働き方改革」に取り組んできた内田洋行はオフィス空間の見直しに加え、会議室の利用や密を防ぐ打ち合わせスペースの利用支援などにも取り組む。NECネッツエスアイは昨年、本社を縮小して首都圏に分散オフィスを設置。いち早くテレワークを実践している。
働き方改革をキーワードにソリューション展開していた企業は、コロナ禍で引き合いが増えてきているという。NECソリューションイノベータは、ニューノーマルを見据えて働き方の見える化を実現する取り組みを進める。富士通エフサスは、社内で実践する在宅勤務や働き方改革のノウハウを横展開できるように取り組み、労務管理などのソリューションも用意して支援を開始。三菱電機インフォメーションネットワークは、コロナ禍でのテレワーク対応の支援を強化。リモートアクセスや端末管理などを説明している。
テレワークや在宅勤務はオフィス勤務の従業員だけでなく、これからは現場作業の効率化なども焦点になってくる。全国保守網を生かしたサポートサービスを展開するNECフィールディングは、スマートグラスを使った遠隔保守支援にも取り組むが、こうした現場支援への取り組みはさらに増えてきそうだ。
日立ソリューションズは、AIによる画像認識などを活用した現場支援の仕組みを展開するほか、日本システムウエアは産業用スマートグラスを活用した遠隔保守支援のサービスを発売した。現場での3密を防ぐ支援メニューは今後さらに増えてくるだろう。
BCP(事業継続計画)の観点から、コロナ禍での最適な事業運営も重要だ。コンタクトセンターを持つ企業などは品質を落とさない受け付け対応が求められる。NECフィールディングはセンターを分散し受け付けしたほか、富士通エフサスも在宅センターを試行。富士通コミュニケーションサービスは、後半戦に向け在宅コンタクトセンターの運用に取り組む。アイティフォーは、在宅コンタクトセンター向けのソリューションを発売。NECプラットフォームズは、国内工場の生産体制を見直しワンファクトリーとして生産品目を工場間で移管できるようにしている。
DX化の流れもさらに加速しそうだ。東芝デジタルソリューションズは、デジタルを軸にしたプラットフォーム化を進めアフターコロナを想定した開発支援を始めようとしている。日立システムズは現場のデジタル化を推進する中で、より幅広い社会インフラまで視野に入れたデジタル化に取り組み始めた。
今年は教育ICTを加速させるGIGAスクール構想も進む。NECフィールディングやダイナブックなどは学校への端末支援だけでなく、ネットワーク構築なども進める。長年教育現場の支援をしてきた内田洋行も端末の展開にとどまらず、使いこなせるICT化に取り組む姿勢だ。
コロナにより市場は変わったものの、ソリューションプロバイダにとって取り組むべき課題は多い。特にコロナに対応したソリューションを求める声も多いことから、各社は後半戦に向けてメニュー開発を強化していく。