2020.09.04 【スイッチ特集】次世代ニーズに対応製品開発を強化
スイッチメーカー各社は、次世代ニーズに対応するスイッチの新製品開発や製品バラエティ拡充に力を入れている。各社は、自動車/車載電装機器やFA/産業機器、高機能モバイル端末、社会インフラなどの成長分野をターゲットに、小型・高性能で操作性・信頼性に優れた製品開発を強化し、国内外での事業拡大を目指す。スイッチ応用製品の開発などにも力が注がれる。
スイッチは、ヒューマン・マシン・インターフェイスおよびマシン・マシン・インターフェイスをつかさどるデバイスとして重要視される。スイッチの用途は広く、スマートフォン/ウエアラブル端末などの携帯端末や白物家電/AV機器、PC/コンピュータ、事務機器、四輪車/二輪車、産業機器/製造装置、計測器、放送機器、電力機器、通信インフラや社会インフラなど、あらゆる工業製品で使用される。
スイッチのグローバル需要は、世界的な機器需要の増大などを背景に、13年から17年にかけて順調に伸長。特に17年のスイッチ市場は、車載関連需要の拡大や世界的な設備投資増大に伴うFA機器/工作機械/半導体製造装置の需要増大などがけん引し、年間を通じて堅調に推移した。
一方、18年は米中貿易摩擦の激化や中国景気減速の影響などにより、特に秋以降、電子部品需要にブレーキがかかって、スイッチの需要も低調だった。19年も、米中貿易協議や中国景気低迷の長期化の影響を受けて、スイッチ市場も一進一退の状況が続いていた。JEITA(電子情報技術産業協会)のグローバル出荷統計によると、19年(1-12月)のスイッチのグローバル出荷額は前年比0.3%減の4370億円となり、微減とはいえ2年連続で前年比マイナスとなった。
20年のスイッチ市場は、調整の一段落から緩やかな回復が見込まれていたが、世界的な自動車市場の低迷や、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済活動停滞による設備投資需要の低迷などから、ここまで低空飛行が続いている。そうした中でもコロナ禍における需要減少については、今年度1Q(4-6月)で底を打ったとされ、今秋から21年にかけて、徐々に回復基調に向かうことが期待されている。特に、コロナ禍で自動化ニーズの高まりなどにより、付加価値の高い産業用スイッチ需要の底上げが予想されている。
足元では低迷が続いている車載向けスイッチについても、CASEをキーワードとした自動車の高機能化が、新たな需要を中長期で創出していくと期待されている。
スイッチの用途別では、自動車/車載電装関連を最大のけん引役として、FA/産業機器関連、日系スイッチメーカーがグローバルで高シェアを持つ携帯端末用などでの成長が見込まれる。特に車載は、ADAS/自動運転技術の高度化や車の安全性・快適性向上、EVシフトに伴う需要活性化が期待される。このほか、医療機器/ヘルスケア関連や、ロボット、ウエアラブル関連、第5世代移動通信規格の5G基地局関連、VR端末、セキュリティ関連での需要増、さらには、5Gの普及に伴うSociety5.0関連市場の広がりなどが、新たなスイッチ需要を創出していくものと見込まれている。
最近の電子機器・装置は、メカニカルスイッチからタッチパネルへの移行が進んで、スイッチ市場には逆風の動きとなっているが、自動車では、新機能の搭載など高機能化の進展が、今後も操作系/検出系スイッチの新用途を創り出していく見通し。同時に、スイッチで培ってきた技術を活用し、タッチパネルモジュールへの参入を強化するスイッチメーカーも少なくない。
スイッチの技術を応用した複合製品に力を注ぐ企業も見られており、操作系カスタムモジュール/ユニットの民生・車載・産機市場への展開によって新規ビジネスの創出が志向されている。
車載用スイッチ動向
自動車には多くの操作/検出系スイッチが使用される。コックピットのフロントパネル回りのほか、ハンドル回りやドアモジュール部にも多く搭載される。ボンネットやトランクの開閉検知などで検出系スイッチも多用。特に車載用検出スイッチは、車1台当たりの搭載数量が年々増加し、今後も新車販売台数の伸びを上回るペースでの需要拡大が見込まれる。
車載用スイッチへの技術要求は、小型軽量かつ高信頼性に加え、防水・防じん、耐振動/衝撃性、長寿命、操作感触の向上、静音化と多彩。車室内の操作系では、日米欧の高級車メーカーは独自性のある操作感触や高級感のある操作音を求めている。各社は長年培ってきた操作フィーリングのノウハウや高度なシミュレーション技術を活用し、顧客要求に応じたカスタムスイッチ開発に力を注ぐ。
運転者の安全性を考慮し、運転者が前方から目を離さず操作できるスイッチやフィードバック機能付きデバイスの開発も進展している。車の電動化に伴い、冗長性を高める2回路/3回路の検出スイッチ開発も進む。
モバイル機器用スイッチ動向
携帯端末用スイッチは、小型・薄型化と高強度・高信頼性・長寿命などの技術要件を同時に満足させることが必要。加えて、最近のスマホは防水性もトレンド。各社はこうした要求に応えるため、シミュレーション技術などを駆使した高度なR&Dを展開する。
最近は、タッチパネル操作の台頭でスイッチ使用数は減少傾向だが、高級スマホでは小型スライドスイッチなどへの根強い需要がある。スマホ用スライドスイッチは、日系メーカーが世界シェアの大半を確保している。
産業機器用スイッチ動向
産業用スイッチ各社は、産業機器・装置の高機能・高性能化や作業性・安全性向上に対する新製品開発に力を入れている。
産業用スイッチの用途はFA機器/製造装置やロボット、工作機械をはじめ、通信・放送用設備、電力インフラ、建設機械、監視カメラ、鉄道関連、航空宇宙関連など多彩。産業機器/システムでは誤作動のない極めて正確な動作が求められるため、良好で確実な操作感触や長期信頼性、耐環境性能、優れた防じん・防水性などを備えたスイッチが追求される。鉄道業界向けなど特定業種に照準を合わせた専用スイッチの開発も進展している。