2020.09.18 【5Gがくる】<11>5Gが変えるコロナ後のテレワーク③
東京商工リサーチの調査によると、緊急事態宣言が発令されていた4-5月の企業における在宅勤務の実施率は一瞬5割を超えたが、解除後の6-7月は3割に急降下したらしい。その背景として、筆者はそのままニューノーマル(新しい日常)へ向かおうとする企業と、再び以前の形に戻ろうとする企業があるとみている。
7月、富士通は社員の勤務形態を基本テレワークとし、フリーアドレスやサテライトオフィス、在宅勤務などによって国内の既存オフィスの床面積を今後3年かけて50%に削減すると発表した。同社のようにこの機会にテレワークを本格導入し、往年の課題であった新たな働き方への移行を意思決定する企業は大企業を中心に徐々に増えてはいるが、まだ半数にも満たない。
中小企業をはじめとした多くの企業はアフターコロナの際には、全従業員が一斉に出勤する元の「職住分離」の形態に戻したい意向なのだろうか。もしそうだとしたらなぜだろうか?
対面に迫る品質で
前回から見てきたテレワーク普及が進まない理由の五つ目に当たる「オンライン会議化」への抵抗が根強いことだ。
SNS世代の若い従業員は相手の顔が見えない緩いコミュニケーションに慣れているが、交渉術に長けた経営者や管理者はやはり相手の顔がはっきり見える密な対面会議の方を好む。
それならば、5Gで実現できる超高速大容量(eMBB)を活用した高精細の4K/8K映像によるオンライン会議を使えばどうだろう。対面会議に迫る品質であればオンライン会議への抵抗も減るはずだ。
そして普及の妨げになっている理由の六つ目が、在宅勤務などのテレワークは「管理しにくい」こと。部下にとって常時監視されていない方がストレスなく業務に集中できる。通勤から解放されることも相まって、従業員の在宅勤務に対する評判はおおむね良いとみている。
一方の上司は部下が目の前にいれば、その一挙手一投足で勤怠はじめ業務の遂行状態、関係ないアプリケーションやWebサイト閲覧などの職務逸脱や情報漏えい行為や健康状態まで把握できる。それゆえ、管理職は在宅勤務に対して懸念を抱いていると聞く。
これを払しょくするには、クラウドのサーバー側でアプリやデータを処理し、端末側ではデータが残らない「シンクライアント」によるテレワークが一番望ましい。しかし、今までは前回の「ネットワーク帯域不足(低速)」で使い勝手が悪いため、あまり普及していなかった。
普及に大きく貢献
この課題は5GのeMBBで解決でき、シンクライアントの使い勝手は飛躍的に高まるためテレワークの普及に大きく貢献するとみている。
また、5Gの多数同時接続(mMTC)も活用できるだろう。たとえば、在宅勤務している全従業員のノートPCやスマートフォンからクラウドへ送られる様々なログ(履歴)データによって、セキュリティポリシー違反の有無だけでなく利用者の体温などのヘルスケア管理を行うこともできる。
これなら、従業員も管理者も安心してテレワークを続けることができる。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉