2020.09.24 【コンデンサ特集】5Gなどで21年以降需要増生産活動再開で受注を押し上げ
コンデンサ需要が徐々に回復の傾向を示している。米中摩擦による景気低迷に追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり経済活動がマヒ。今年前半は景気が予想以上に低迷した。コンデンサの需要も同様に動きが鈍り、前年同期実績を下回る状況が続いた。ここにきて、世界の経済活動が再開。自動車の生産や販売は鈍いものの、テレワークの影響でコンシューマ機器の需要が増加しているほか、高速通信規格5G関連、これに伴う半導体デバイス関連の需要も復活しつつある。今後、自動車分野も環境、省エネをキーワードにxEVが動き出す見通しで、コンデンサ需要は21年にかけて増加するものとみられる。
市場動向
JEITAのグローバル出荷統計によると、コンデンサは13年以降、スマートフォンと自動車向けを中心に出荷規模が拡大している。浮き沈みはあったものの、産業機器分野向けも市場規模を拡大してきた。
18年秋以降は、スマホのハイエンド機種を中心に需要が低調。また、中国を中心に旺盛だった設備投資が減速した。
19年におけるコンデンサの需要は、低調な産機向けを引きずり、スマホ向けも伸び率が低下。しかも中国や欧州における新車販売台数が前年割れし、自動車の世界販売台数も前年割れで続いている。そのため、グローバル出荷額は、前年度比8%減の1兆1250億円にとどまった。
20年に入っても米中問題が長期化し、深刻な問題に発展している上、新型コロナウイルスの感染症の広がりが大きな不安材料として発生。4、5月ごろをピークに世界中に影響を及ぼし、ひと頃、経済活動がマヒし、早期の終息が見えない状況に陥った。
そうした中、各国では徐々に制限していた経済活動を再開。コロナ対策と経済活動の両立を図る動きが表面化。ここにきて様々な消費動向に動きが見られるようになった。
コンデンサの需要もひと頃の厳しい状況から脱しつつある。グローバル出荷は、5月の前年同月比でマイナスから、6月には同5%増の943億円に達した。
在庫が底を打ち、しかも各種電子機器の生産活動の再開がコンデンサ各社における受注を押し上げている。
自動車は18年後半からマイナスの状況が続いているものの、コロナ対策でテレワークが定着化したことに伴うPCをはじめとするコンシューマ機器の生産台数が増加。さらに新たな市場で期待される5Gは、設備投資が本格化し、基地局用コンデンサ需要が立ち上がる。また、5G対応端末の開発も活発化してきた。さらに今後IoTに5Gがどう絡んで、コンデンサ需要を創出するのかが注目される。
また、自動車は、xEV、ADASなどを中心にCASEの進展が今後、車載用コンデンサの新たな市場を形成していくことになろう。
アルミ電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサは、低コストで小型、大容量を得られるのが特徴。しかも電圧範囲が広いため、使用される用途は広い。
一般的に電解質に電解液を使用しているが、ここ数年で導電性高分子タイプ、ハイブリッドタイプが開発され、用途への最適化が進んでいる。
電解質に液体を使用した電解液タイプは、伝導機構がイオン伝導のため、ESRはほかのタイプに比べて大きい。しかし、酸化アルミニウムの欠陥部を修復する作用があることから信頼性が高い。車載用として150度対応を実現。産機向けでは700Vまで高耐圧化している。
導電性高分子タイプは、車載用コンデンサとして需要が急速に伸びている。伝導機構は電子伝導のため、低ESRで高リプル電流対応が特徴。ハイブリッドコンデンサは電解質に電解液と導電性高分子の両方を使用。電気的特性は電解液タイプと導電性高分子タイプの中間的な位置付けだが、自己修復性を有することで、高電圧品の信頼性が向上。定格電圧80Vまで高耐電圧化したことで、車載向けとして採用が進む。
セラミックコンデンサ
セラミックコンデンサは、スマートフォン向けなどの高密度実装分野では、1608サイズから、1005サイズ、さらに0603サイズ、0402サイズに小型化シフト。既に0201サイズも実用化。基板内蔵化への対応では、厚み0.064ミリメートルの極薄MLCCが商品化している。
大容量化は、誘電体セラミック粒子を均一に微粒子化し、薄層で多層化することが必要。既に誘電体厚みを1マイクロメートル内外に薄くし、多層積層することで数百μFが実現されている。
MLCCは、電極材料をパラジウムから、銀-パラジウム、さらにニッケルに変えることで大容量化してきた。現在では誘電体層、電極層ともに厚み0・8マイクロメートル以下へと進展。小型、大容量化が飛躍的に進展している。
最新技術としては、0402サイズで1μFを実現。さらに0201サイズで、0・1μFを達成し、5G用端末などの需要に備える。また、車載向けでは、業界初となる縦横反転型0510サイズ品が開発された。通常タイプのMLCCと比べて電極方向を縦横90度反転させた構造であり、電流ルートを太く短くすることで、ESLやインピーダンスを低減する。さらに1005サイズの三端子低ESL・MLCC、および1608サイズで10μFの三端子低ESL・MLCCなどが開発された。
タンタルコンデンサ
タンタルコンデンサはタンタル粉末を誘電体として、陰極に二酸化マンガンあるいは導電性高分子を使ったもの。
小型、大容量を特徴としており、PC、タブレットを中心にデジタル機器を主力需要分野としている。
大容量化するためにはタンタル粉末の微細化で表面積を拡大し、CV積を大きくすること。タンタル粉末のCV積は12年に20万CVだったのが、16年では30万CVへと大きくなり、これに伴って容量が飛躍的に拡大している。
小型化では、構造を一般的なモールド構造から下面電極構造にすることで薄型化。現在では厚み1ミリ内外まで薄型化技術が進展している。
さらに基板端子構造を採用することで、2012サイズが1608サイズ、さらには1005サイズへと小型化している。小型、薄型化によって、スマートフォンへの搭載が可能になっている。
低ESR化を推進するためには、陰極材料を二酸化マンガンから比抵抗の小さい導電性高分子に代替することによって、10分の1以下の低ESRを実現できる。
フィルムコンデンサ
フィルムコンデンサは、電源回路において、平滑用、サージ吸収のフィルタ用、スナバ用、ノイズ対策のXおよびYコンデンサ用などとして用いられている。
誘電体フィルムは、低圧用の一般的な製品ではポリエチレンテレフタレート(PET)を使用。高電圧、低損失、周波数特性が求められる用途に対しては、ポリプロピレン(PP)を採用する。
このほか、高耐熱性の用途やチップ化にはポリフェニレンサルファイド(PPS)が用いられている。
新エネルギー、省エネ家電、さらには環境を配慮した自動車のxEV化が進展している。
いずれも高電圧が必要なコンバータやインバータ回路によって、電力を効率的に変換する必要がある。電圧を安定化する平滑コンデンサや半導体デバイス保護に必要なサージ吸収用のスナバコンデンサが使われる。
この用途には電極に蒸着金属を用いたメタライズドコンデンサが用いられている。低損失、高耐圧、長寿命、優れた温度特性が評価されているため。
自動車のxEVなどの電動系パワートレイン系の構成中枢であるパワーコントロールユニットのインバータ回路には、フィルムコンデンサが主力に使用されている。
高電圧、大電流化、広い温度範囲、安全性、自由な形状設計--などが支持されているのが理由。引き続き、EV化が進展する中、バッテリ、インバータの電圧安定化、ノイズ、サージ対策などの複数の役割を果たすために複合モジュール製品の搭載が進展する見通し。
インバータ回路などに使用されるスイッチングデバイスは、現在のIGBTから、SiC、GaNなどの次世代パワーデバイスに進化する。
そのため、フィルムコンデンサは、低ESR、低ESL化が要求され、しかも高耐熱化に向けた開発が求められる。
電気二重層キャパシタ
電気二重層キャパシタ(EDLC)は、正極と負極からなる一対の電極と解離したイオンを含む電解液から構成されるもの。電極と電解液の界面に正電荷層と負電荷層が相対する現象が電気二重層。充電時にはイオンが電極表面に吸着し、放電時には電極中の電荷を放出するとともに電極表面のイオンが離れる。EDLCは、高出力、充放電回数が多い用途に適している。
素子構造は、電極箔とセパレータを交互に積層した積層型、電極箔とセパレータを巻き取る回巻型がある。積層型は形状を薄くできるのが特徴。回巻型は、アルミ電解コンデンサと同様な製造工法を用いることができるというメリットがある。
EDLCは、リチウムイオン電池や鉛蓄電池に比べてエネルギー密度が低い。一方ではパワー密度、サイクル寿命が優れる性能を有している。リチウムイオンキャパシタ(LiC)はEDLCとリチウムイオン電池の中間的な位置付け。
エネルギー密度を注視する用途とパワー密度を欲する用途などによって、使い分けられることになる。
EDLCは、これまで小型の電子機器におけるバックアップ用途を中心に市場規模が拡大してきたが、大容量および大型化、モジュール化技術を取り入れることで、回生エネルギーを利用する用途が新たに出現してきた。自動車をはじめ、建機、エレベータなど、産業機器分野で市場が広がっている。
大型品は、大きな電流で充放電する用途を拡大していくために、今後内部抵抗をいかに小さくできるかが重要になってくる。
また、小型品は、コイン型、超小型・薄型タイプがモバイル機器、小型、中型のEDLCが、ゲーム機の電源バックアップやプリンタ、プロジェクタなどの補助電源用として使用されている。これらに加え、新たにスマートメーターの電源バックアップ用途で需要が伸びている。
今後、自動車におけるADAS、自動運転関連の機能搭載にともなう電源バックアップの用途拡大も期待されている。