2020.10.27 微生物の発酵技術で廃棄物を資源化長州産業、地域内でのエネルギー循環を目指す

販売を本格化させる設備

国際畜産資材EXPOの出展ブースには多くの来場者が足を止めた国際畜産資材EXPOの出展ブースには多くの来場者が足を止めた

ブースでは「成果物」の見本が紹介されたブースでは「成果物」の見本が紹介された

 太陽光パネルの製造、販売を手がける長州産業(山口県山陽小野田市)が、新エネルギー事業として、微生物による発酵技術を活用し食品廃棄物などを資源化する設備の販売を本格化させる。資源化された廃棄物を燃料にしてバイオマス発電を行う計画もあり、主力の太陽光発電と相まって地域内でのエネルギー循環を目指す取り組みとなる。

 同社は給湯機などの販売を行っていたが、98年、太陽光パネルに参入した。09年に自社工場での製造に切り替え、国内製造する強みを生かして販売を伸ばしてきた。太陽光を中心としたエネルギー機器事業は、売上げの約7割を占める柱の事業だ。

 近年はバイオマスにも着目している。19年、発酵乾燥技術の研究開発を得意とするJET(東京都千代田区)と連携した。長州産業が強みとするモノづくりのノウハウなどを生かし、廃棄物資源化設備を、製品ブランド「BES」(ベス=バイオマス・エネルギー・システム)として今年販売を始めた。

 同技術は14-16日に千葉・幕張メッセで開かれた「第2回国際畜産資材EXPO」に、JETと共同で初出展した。

 ベスは、地域から出される食品廃棄物やあらゆる家畜のふん尿などを主な処理対象とする。微生物が入った処理装置内は真空状態で、周辺に約140度の蒸気を巡らせて高温状態にし、発酵の処理を速める。真空状態なので、臭いも漏れないという。

 処理前の分別は必要ない。プラスチックなどの容器に入ったままであっても、高温の装置内で廃棄物だけ発酵が進み、処理後に簡単な振るいにかければ分別が可能だ。

 水分は蒸気として排出するため、環境規制が厳しい土壌や水質を汚染させる心配もなく、水質を改善する設備なども不要。1台当たり廃棄物1-25㌧をそのまま、1日で処理が完了する。廃棄物を一時保管する必要もないのでコスト削減につながる。

 処理後に残ったかすは「成果物」と呼ばれ、水分が蒸発して5分の1ほどの量になる。「成果物を乾燥させる度合いも装置内で自由が利く。処理後の再利用方法に応じて調整できるため、様々な再利用の仕方を提案できる」(JET)という。

 成果物は、飼料や堆肥のほか、家畜の寝床に敷く敷料にしたり、バイオマス発電の燃料にしたりする計画だ。長州産業の川原英樹氏は「コミュニティ内でのエネルギーや資源の循環を目指している。自治体などと組んで、発電した電気を公共施設に供給することなども考えていきたい」と語っている。

 既にJETが納入した畜産農家などからは好評を得ているという。長州産業としても、今年度中に初号機を受注し納入までこぎつけたい考えだ。将来的にはベスを自社製造することも視野に入れている。