2020.12.01 【テレビ特集】大画面高画質の提案加速外出自粛で視聴機会増、買い替え促進へ

年末商戦に向け店頭での4Kテレビの実演にも力が入る年末商戦に向け店頭での4Kテレビの実演にも力が入る

 主要テレビメーカー各社は、年末に向け大画面高画質テレビの提案を加速させる。新型コロナウイルスの感染が再び広がりを見せる中、外出自粛に伴う家庭内での娯楽も注目されている。年末年始はテレビをはじめ、動画コンテンツの視聴機会も増えてくることから、より高画質化や高音質化に磨きのかかった最新テレビへの買い替えを促して、商戦を盛り上げていくことが求められる。

 今年は新型コロナウイルスの拡大で市場環境が大きく変わった。当初予定されていた東京オリンピック/パラリンピックが延期になり、一大スポーツイベントを契機に大画面テレビの拡販を狙っていたテレビメーカー各社にとっては、大きな打撃になるとみられていた。

 さらに中国では、新型コロナによる都市封鎖などでサプライチェーンが分断し、テレビの供給もままならない状況になった。

 ところがコロナ禍での外出自粛は、家庭内でのテレビの視聴時間を増やす結果となり、夏以降はテレビの販売が堅調に推移するようになった。高精細4Kテレビを中心にした大画面高画質テレビの買い替えに加え、寝室や書斎、子ども部屋などに2台目、3台目を購入する動きも出ており、ハイビジョンテレビの販売が調子良くなっている。

 こうした市場の動きを見ながら主要テレビメーカー各社は夏以降、4Kテレビを中心に20年モデルを続々と投入している。今年の新製品は画質や音質といったテレビ本来の性能を一層高めるとともにインターネット接続やネット動画視聴を快適にできるスマートテレビの機能も充実。もちろん2018年12月から始まった新4K衛星放送対応チューナ搭載が当たり前になっている。昨年から本格化しているAI(人工知能)の搭載も進む。

 市場動向を見ると、電子情報技術産業協会(JEITA)の国内のテレビ出荷統計では、緊急事態宣言の出た4月以降、テレビ全体の出荷台数は直近の10月まで7カ月連続で前年を上回っており、7月以降は4カ月連続で2桁伸長している。50V型は今年1月以降も連続して前年を上回っており、1月からの累計でも前年同期比32.8%増と好調だ。4K対応テレビは10カ月累計で同17.7%増、有機ELテレビは同36.2%増といずれも大きく伸びている。

 直近の10月の製品別出荷台数を見ると、テレビ全体で同28.1%増の42万5000台。4Kテレビは同25.1%増の25万6000台で薄型テレビ全体に占める4K比率は60.1%、金額構成比は83.1%の335億円となった。有機ELテレビは同101.8%増の4万2000台、109億円となっている。

有機ELや4K8K対応など訴求

 主要テレビメーカー各社の新製品を見ると、パナソニックは「4Kビエラ」シリーズで液晶と有機ELを展開。4K有機ELテレビのフラグシップ機「HZ2000」は自社設計・自社組み立ての有機ELディスプレイにより一層の高画質化を図った。高級オーディオ「テクニクス」がチューニングした立体音響が楽しめる独自のスピーカシステムも採用し、画質・音質ともに磨きをかけている。

 ソニーは「4Kブラビア」シリーズで有機EL、液晶ともに豊富な画面サイズを用意し提案を進めている。4K有機ELは究極の画音一体を目指し、画面を振動させて音を出す独自の音響システムを搭載。独自のパネル制御技術などで、テレビ放送からネット動画まであらゆるコンテンツを高画質で再現する。アンドロイドTVを搭載しているので、ネットとの親和性も高い。

 東芝映像ソリューションは、液晶と有機ELの「4Kレグザ」シリーズで豊富な画面サイズを用意し、フルラインで提案を進めている。特にクラウドのAI(人工知能)を使った高画質化技術を搭載しており、放送番組に応じて画質が最適化される独自の機能が特徴になる。2台目、3台目需要が拡大している背景から、インターネット動画視聴に特化したハイビジョンテレビを投入したり、ネット動画を高画質で楽しめる4Kモデルを発売したりして攻勢をかけている。

 シャープは、超高精細8K液晶テレビ「アクオス8K」シリーズを引き続き前面に出して提案していくとともに今年は4K液晶に加え、4K有機ELテレビを発売した。8Kテレビのフラグシップ機は8Kと4Kのチューナを搭載。初投入の4K有機ELは8Kで培ってきた高画質化技術を組み込み、新たな映像美を訴求している。

 海外メーカーでは韓国LGエレクトロニクス・ジャパンが有機ELと液晶で、8Kと4Kのモデルを幅広く展開。AI技術を活用し高画質化と高音質化を図っており、4Kから8Kまで豊富なラインアップで訴求する。中国ハイセンスの日本法人ハイセンスジャパンは、新4K衛星放送チューナ内蔵の液晶テレビなどを投入し、価格性能比の高さを提案している。

 昨年、日本市場への本格参入を果たした中国家電大手TCLの日本法人TCLジャパンエレクトロニクスは、グローバルで展開する量子ドットLED技術「QLED」を採用した4Kテレビを中心に製品群を拡充してきている。今年はサウンドバーをテレビ前面に搭載し、画質と音質を大幅に強化した新製品を発売。「ドルビーアトモス」といった立体音響に対応し、家にいながら映画館のような音響が楽しめる。

 各社は年末商戦に向けて店頭での実演などに力を入れていく。