2020.12.03 【抵抗器技術特集】抵抗器、再び需要増大基調 極小化や高精度化など技術が高度化
チップ抵抗器の小型化技術がさらに進展する
抵抗器の需要が再び増加基調に転じている。新型コロナウイルス感染症の影響で、3-5月を底に低調に推移していたが、世界中が経済活動を再開したのを機に需要が動き出した。特に第5世代移動体通信規格・5G関連需要が立ち上がってきたのに加え、テレワーク、学校教育関連を中心にパソコン、タブレット、さらにはゲーム機など、巣ごもり需要が部品需要を押し上げている。自動車は、少し遅れて生産台数が増加基調に転じ、中でもxEVの生産が底上げし、車載用部品の需要増に加速をつけている。
そうした中、抵抗器技術の進化は継続。車載用抵抗器は、相次ぐ新機能の採用によって、ECUの搭載点数が増加し、多くの用途で様々な抵抗器を使用するようになった。特にxEV化でモーター駆動関連のDC-DCコンバータ、インバータ、電池、チャージャ関連のパワー抵抗器は車載分野で需要を押し上げる。また、ADASをはじめとする安全系を中心とした機構強化はECUの搭載点数を増やす。この動きも抵抗器需要を伸ばす。ミリ波レーダー、カメラをはじめとするADAS関連では、それぞれの制御回路を小型モジュール化する動きが見られる。そのため、チップ抵抗器は0603サイズ、0402サイズといった極小チップの採用が始まっている。
電源周辺部の回路向けに硫化に強く、硫化発生による抵抗値断線を防ぐために耐硫化チップ抵抗器が使用される。硫化ガス濃度が高い環境下で使用された場合、内部電極の硫化による断線という現象に対応。
自動車用エンジンの制御回路のほか、各種ECUなどでは耐サージチップ抵抗器を搭載。汎用チップに比べて抵抗体の経路が長くなるような特殊なパターンを採用しているもの。
電動パワーステアリングや電動ブレーキなど、様々な回路で利用されているモーターへの負担が大きくなっている。また、アクチュエータやバッテリ回路も多く、電圧・電流を制御するための電流検出用抵抗器が用いられる。金属板抵抗体が製品ボディを兼ねるパワー低抵抗チップ抵抗器の大電流、ハイパワー、低抵抗化技術が進展。
ヘッドランプの駆動回路、バッテリ周辺、DC-DCコンバータ、インバータなどでは高耐圧チップ抵抗器を使用。これまで複数個の抵抗器を直列に接続して使用されていたが、高耐圧チップで、使用量を削減できる。
小型・薄型の要求に対応
スマートフォンをはじめ、各種モジュール、さらにIoT関連端末向けでは、小型、薄型化の要求が強まる。特に5G用スマホは、多機能化するとともに電池が占める面積が大きくなることから小型、薄型基板への部品実装密度がさらに高まる。チップ抵抗器は、より小型化が求められることになる。そのため、0603サイズ、0402サイズの需要が伸びる見通しだ。また、次世代チップとされる0201サイズの搭載も始まる可能性を秘めている。
スマホの高周波回路では、高周波帯で高精度抵抗器を要求する。そのため、抵抗値精度や抵抗温度係数などに優れた薄膜チップ抵抗器が用いられる。薄膜チップの場合も小型化が要求され、0402サイズまで小型化。
電源回路では小型で高電力のチップ抵抗器が要求されるほか、電流検出用途で低抵抗チップが用いられる。厚膜、薄膜、金属箔、金属板などの抵抗体がある中、金属板タイプの需要が伸びている。中でも小型、ハイパワー、低抵抗、高精度を特徴とする金属板チップ抵抗器の採用が進む。最小サイズは1005サイズ。
さらにモジュールでは部品内蔵基板で小型化する動きも見られる。抵抗器、コンデンサ、インダクタなどを基板の内層に展開するもの。現在、厚みが0.13ミリメートルまで極薄化している。