2021.01.05 【メーカーズ ヒストリー】アキュフェーズ物語〈4〉限られた専門店で販売

全国の取り扱い店舗との絆は強い。試聴会は各地で盛況

■限定専門店で扱ってもらう営業戦略

 春日仲一氏の営業戦略はマスセールス手法ではなかった。ハイエンド・オーディオの市場規模は小さく少量生産・少量販売に徹さざるを得ないからで、ましてやロングセラーを本意とする高付加価値製品が値崩れを起こしては元も子もない。

 そこで、「限られた専門店で売ってもらう」営業戦略で臨み、第1号モデルは全国100店そこそこで販売を開始した。戦略が間違っていなかったのは、その高音質設計・高耐久性・高信頼性などが認められて、日ならずして世界の一流ブランドの仲間入りを果たしたことからも明らかだ。

 この営業戦略は48年後の今も変わることなく引き継がれているが、取扱店舗数は約150店舗に増えている。いずれもハイエンド・オーディオに強く、アキュフェーズとは強い信頼関係を築いている専門店ばかりである。

■マッキントッシュを追い、マークレビンソンと競い合う

 新会社発足当時の高級Hi-Fiコンポ市場(特にアンプ関連)はどうであったかというと、その高音質再生がマニア層から高い評価を得ていたのがマッキントッシュ・ブランドであった。同社は1949年創立の米国企業で、創業以来20年余りの間に数々の銘機を世に送り出し、日本のハイエンド・オーディオ市場でも確たるポジションと名声を得ていた。

 新規参入のアキュフェーズとしては「追いつき追い越せ」の目標、つまり格好のベンチマークとなる存在であった。

 高級Hi-Fiコンポではマークレビンソン・ブランドも忘れるわけにいかないが、同社はくしくもアキュフェーズと同じ72年創業の米国企業である。マニア層に認めてもらわない限り存在できない高級Hi-Fiコンポ市場で強みを発揮していたのが海外ブランドであり、国内ブランドの新規参入が容易でなかったのは想像に難くない。

 例年、秋に開催される「東京インターナショナルオーディオショウ」には国内外の有力ブランドが一堂に会して試聴中心に新製品の魅力などを紹介しているが、いまも海外ブランドの出展数が圧倒的に多い。

 それもそのはず、同イベントの第1回(83年)から第14回(96年)までは「輸入オーディオショウ」として海外の有力ブランドが年に一度、高級Hi-Fiコンポの魅力を売り込む祭典であったからだ。第15回開催(97年)から「東京インターナショナルオーディオショウ」と改まり、国内ブランドも参加するようになった、という経緯がある。

「 東京インターナショナルオーディオショウ」で超満員のアキュフェーズブース

■アキュフェーズ・ブランドに込められた思い

 なお、アキュフェーズ(Accuphase)というブランドはAccurate(正確な)とphase(位相)を一体にした造語で、「オーディオの奥義を極めたい」という意思を表している。(つづく)

アキュフェーズのロゴマーク