2021.01.19 【メーカーズ ヒストリー】アキュフェーズ物語〈6〉取扱店、愛用者と強い信頼関係

5年間保証の案内

■経営を安定させ販売店と愛用者との信頼関係構築

 アキュフェーズは、大株主だった春日二郎氏が生前、株式(資本金9600万円)の大半を会社や役員、従業員持株会に適正価格で譲渡し、株式が分散しない回避策を講じている。

 そこには株式公開会社でよくある経営権を巡る主導権争いを起こしてはならない、という配慮がうかがえる。創業者のこの遺志を引き継ぎながら次の世代へとバトンタッチされていくのであろう。

 また、健全経営を続けるための経営指標としては経常利益率10%以上、自己資本比率80%以上を目標としているが、売上げの成長戦略は設定していない。

 むしろ対面販売を主眼としているため、独自の「トレーサビリティ」というシステムを確立することで、取扱店、愛用者とは強い信頼関係を築いている。

■無償保証5年、中古品購入者もサポート

 無償保証期間5年(一部製品除く)やライフタイム修理を掲げているのはその一例。愛用者には毎年年賀状を送り、1年間の新製品・新技術を紹介して近況を報告しており、その枚数は5万通を超えている。

 新しい施策としては、2017年5月から同社製中古品購入者を対象とした「セカンドユーザー登録」をホームページ上で開始していることが挙げられる。

セカンドユーザー登録サイト

 より安全に使用してもらうのがその趣旨だが、仮に中古品であっても「本来のアキュフェーズ・サウンドで聴いてもらいたい」という思いもあるはず。

 中古品市場でも高価格で売られている同社製品は、既に10年以上経過して保証期間を過ぎているケースが多いため、経年変化に伴う劣化などの修理依頼については「有償」で引き受けている。

 リピーター購入が約80%を占める同社にとって、このセカンドユーザーは新たなファン獲得にもなっている。

 17年末、これらの取り組みが評価されて「製品安全対策優良企業表彰」(経済産業省主催)のゴールド企業に認定されている。

 18年4月にはオーディオ文化の発展に寄与した功績などが認められ、齋藤重正会長が「旭日単光章」を受章している。

■SACD/CDプレヤー開発に注力

 現在、同社の売上げはプリメインアンプなど主要4品目で約80%に達している。中でも高価格モデルが好評を得ているSACDプレヤーの比率が高い。

 同社がCDプレヤー分野に進出したのは1986年だが、セパレート型(DP-80/DC-81)で新規参入したことが大きな話題を集めた。2000年に発売したセパレート型SACDプレヤー「DP-100/DC-101」はマニア層から絶賛を浴びる。同時に歪み率や雑音、リニアリティなどの特性を支えるSACD/CDドライブ調達が困難になってきたため、自社開発に着手している。(つづく)