2021.01.27 動画解析AIサービスでさらなる先行狙うI’mbesideyou・神谷社長に聞く

神谷 社長

動画解析AIサービス「I'mbesideyou」サービスイメージ動画解析AIサービス「I'mbesideyou」サービスイメージ

ローカルPCのカメラを使って顔を動画解析するエッジ型の開発も進めるローカルPCのカメラを使って顔を動画解析するエッジ型の開発も進める

 動画解析AI(人工知能)を提供するI'mbesideyou(アイムビサイドユー、東京都世田谷区)は、一度目の緊急事態宣言が明けたばかりの昨年6月に設立したスタートアップ企業だ。「コロナ・ネイティブ」のスタートアップを自認する同社は、コロナ禍で急速に普及したオンラインコミュニケーションに今後求められるサービスとして動画解析に着目。「驚いたことに、ほかにやっているところがない」(神谷渉三社長)という動画解析AIサービス「I'mbesideyou」は、国際特許を1月末で35件、年内には100件出願することを計画する。既に昨年7月に出願した5件は国際特許が成立見込みだ。競合の追随がない状況で、さらなる先行を狙う。神谷社長に今後の成長戦略などを聞いた。

コロナ下で起業

 ――コロナ下での創業とは、思い切った決断ですね。

 神谷社長 NTTデータでAI開発や動画解析を専門にやってきたスペシャリスト2人を誘って昨年6月25日に設立した。オンラインでは表情が読みづらいが、その中にあるエモーショナルな表情をとらえ、AIで解析できるサービスを開発した。コロナ禍でオンライン授業が広がるなど、そうしたサービスを提供する教育関連の企業などに採用実績がある。

 オンライン授業では、生徒の表情を解析することで、真剣に聴いているかや、楽しんでいるかなど様々なことが分かる。教師が生徒に言ってはならないNGワードなどと合わせて動画解析でレポートできるため、授業の質を高められる。実際、AIによるオンライン授業の解約予知は84%に達するなど、高い精度を実現している。

 動画解析サービスは今後、絶対に必要になると考えている。スピード勝負だと思い、昨年5月頃から立ち上げを検討し、メンバーを集めてすぐに起業した。

 ――いまだ競合は出てきていない状況なのでしょうか。

 神谷社長 今のところ同じようなサービスを提供している競合はないと思う。
当社は昨年、シンガポール政府機関が主催したアジア最大規模のスタートアップコンテストに応募した。7500社の応募があった中で、当社はトップ20のファイナリストに選ばれた。当社のようなサービスを他に提供している企業がないからこそ、選ばれたのではないかと思う。

10分の1以下の市場価格に強み

 ――提供するサービスの強みは。

 神谷社長 スペシャリスト3人が集まり、短期間で開発した。大企業では一緒に仕事することは絶対にありえない組み合わせの3人だからこそ、それを可能にした。そのため、導入費が市場価格の10分の1以下というローコストにもつなげている。

 ――今年のCESにも出展しましたね。

 神谷社長 今年のCESはオンラインだったため、出展しやすかった。

 CESでは、ローカルPCを使ったエッジ型顔認識技術を紹介した。今の動画解析サービスはクラウド版で、そのエッジ版といったところだ。

 クラウドベースでは、顔認識の精度はどうやっても100%にはならない。処理能力の問題などもあって、そこにリソースを割いてばかりいるのも現実的ではない。そこで、ローカルPCのリソースを使い、AIで顔の解析を行えないかと考えた。

 カメラ付きPCは今や当たり前になっている。ハイスペックなPCでなくても、メモリを8GBほど積んだPCできちんと稼働しており、カメラで取得した情報から顔認識もできている。

 実は、カメラをオフにしていても、カメラからの情報を取得できる機能も備えている。プライバシー問題などクリアすべき課題もあるが、ライフログの記録として活用できる面もあり、顔色が悪くなればアラートを出すなど、メンタルヘルスケアといった医療関連で使える可能性がある。大学とも連携しており、様々な取り組みを進めている。

25年度でIPO、売上げ1000億円が目標

 ――海外展開も狙っていきますか。

 神谷社長 事業は、日本だけでなく、インドにも展開していく。(オンラインコミュニケーションツール)「Zoom」が普及している国や地域を重視していく。特にインドは期待しており、インド工科大との連携も始めている。

 25年度(25年4月-26年3月)にはIPO(株式公開)したいと考えており、グローバルで1000億円の売上げを目指している。日本でも、現在の主力である教育分野で10億円、教育以外の分野で100億円を売上げる企業への成長を目指す。

 海外は、今年が実績を作る初年度。インドを軸に将来のビジネスにつながる活動を行っていく。

 AIによる動画解析サービスは、19年に提供を開始していてもだれも見向きもしなかったはずだ。コロナの影響で社会環境が変わり、オンラインのコミュニケーションツールが急激に普及した。だからこそ必要になっており、この流れは今後も変わらないだろう。
 
 当社は「コロナ・ネイティブ」の企業として、いち早くサービスを提供し、スピード感を持って事業を拡大させていきたいと思っている。