2021.02.09 【メーカーズヒストリー】アキュフェーズ物語〈9〉創業50周年で次の世代へ

創業50周年記念モデルのプリアンプ「C-3900」

■社長に鈴木副社長が昇格


 昨年10月、鈴木雅臣副社長が代表取締役社長、和田文昭専務が同副社長へと昇格し、新2トップが船出した。これに伴い伊藤英晴社長は取締役会長、齋藤重正会長は相談役に就任し、創業50周年を花道に次の世代へとバトンタッチされた。 
 前期(20年9月期)は同社の主要市場である各国で新型コロナが猛威を振るっていたため業績の悪化が懸念されたが、杞憂(きゆう)だった。

 ほぼ計画通りの好業績(売上げ24億円など)を残しており、トップ人事もスムーズに運んだといえる。50周年記念モデルのプリアンプC-3900など新製品中心に「欧州やアジアでの売れ行きが好調だった」(鈴木社長)のがプラス要因。

鈴木 新社長

 鈴木社長(現64歳)が入社したのは1981年、24歳だった。大学卒業後勤めていた国内半導体メーカーからの転職で、アキュフェーズとは「出会いの喜び」があった。同社発足第1弾モデルのうち人気のあったパワーアンプ「P-300S」を購入した鈴木青年は、その素晴らしい高音質サウンドにエンジニアである彼の感性が揺さぶられ、矢も盾もたまらずアキュフェーズの門をたたいているからだ。希望通り「オーディオ大好き人間」の仲間入りを果たす。40年が経過し、社長まで上り詰めたその胸中を察すると、感慨無量であろう。

 入社後、開発陣の中心メンバーの一人として設計部門で「匠の技」を磨き、リピート客の多いアキュフェーズファンの要望に応えて音質や性能などでより深化した製品開発に全力を注ぐ。その中で1992年に提案したセパレートCDシステムのDAコンバータ「DC-91」は「今でも記憶に残る会心の自信作だった」と次のように語る。

 「新しいDA変換回路が実験段階から驚異的な性能(当時)を発揮し、想定通りに開発が進んだ。音質はまさに空間に歌手がホログラムのように浮かび上がる感じで、自分でも驚くほどだった。このDC-91を購入された顧客を訪ねると、『何かいいことがあったんですか? すごく幸せな音がします』と絶賛され、無上の喜びを感じたことを覚えている」。

 鈴木社長、和田副社長の新2トップがスタートしてから4カ月、年末年始の商戦は「海外が好調だった」という。引き続き創業以来の基本スタンスを堅持しながらブランドにふさわしい「究極の音創り」に挑んでいく。(おわり)