2021.02.08 【この一冊】 「IOWNで未来を描くNTTの研究者たち」 川添雄彦監修 大森久美子著 NTT出版

 「働いている人は、ロボットが周りに増えてきて本当に幸せで豊かなのだろうか」。工場のIoT化に取り組んできた若手技術者に浮かんだ疑問だ。

 2030年からのサービス提供を見込むNTTの「IOWN構想」。世界最小の消費電力で動く光トランジスタの発明を発端とし、電気信号との変換を行わず、発信元から受信先まで全て光信号だけで通信を行う「オールフォトニクスネットワーク」が中核技術だ。しかし、その目標は高速大容量の情報通信技術の実現にとどまらない。

 「双子」と称するほど現実にそっくりな仮想のデジタル世界「デジタルツイン」によって実社会の未来予測をしたり、クラウドなどのICT資源を柔軟に選択する「コグニティブファウンデーション」で、ネットワーク運用の完全自動化を目指す―など。それら革新的な情報通信基盤の構築で様々な課題を解決し、持続可能な社会への変革を目指す。

 技術の進化は人と調和できるか―。次世代のコミュニケーション基盤開発に取り組むNTTの研究者たちがIOWNへの期待を語る。
NTT出版、194ページ、1700円(税別)。